アマビエはもういなくなった?流行したのは2019年ではなく2020年|「甘エビ」と聞き間違えた人は70%以上だったのか

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新型コロナウイルス流行初期に一気に有名になった妖怪「アマビエ」。一時期はSNS、テレビ、ポスター、お菓子、グッズなど至るところで見かけましたが、現在は当時ほど目立たなくなったため、「アマビエはもういなくなったの?」と感じる人もいるでしょう。また、初めて「アマビエ」という名前を聞いたとき、「甘エビ?」と聞き間違えたり言い間違えたりした記憶がある人もいるかもしれません。

結論から整理すると、アマビエそのものがいなくなったわけではありません。もともとは江戸時代の史料に登場する妖怪で、2020年の新型コロナ禍をきっかけに現代で爆発的なブームになった存在です。一方、「初めて聞いた人の70%以上が甘エビと間違えた」という統計については、信頼できる調査結果を確認できません。

さらに時期についても重要で、現代のアマビエブームが始まったのは2019年ではなく2020年です。この記事では、アマビエがいつ流行したのか、なぜ最近見かけなくなったのか、「甘エビ」との聞き間違い率に根拠があるのかを資料に基づいて整理します。

アマビエが大流行したのは2019年ではなく2020年

「2019年頃にアマビエを初めて聞いた」という記憶があっても不思議ではありませんが、日本社会でアマビエが爆発的に知られるようになった時期として確認できるのは2020年です。

JTB総合研究所によると、2020年2月27日に妖怪掛け軸専門店がTwitter(現在のX)で、疫病退散の伝承を持つアマビエを紹介し、「アマビエの力を借りよう」という趣旨の投稿をしたことが現代のブームの端緒になりました。その後、「アマビエチャレンジ」「アマビエ祭り」などとしてイラスト、漫画、動画、フィギュアなどが急速にSNSへ投稿されていきました。[参照] JTB総合研究所「日本の妖怪が世界へ。アマビエブームにみる『伝承』の価値」

つまり「コロナ禍で急に出てきたアマビエ」という現代の記憶については、2019年ではなく2020年2月末以降と考えるのが正確です。

そもそもアマビエとは何者なのか

アマビエは2020年に創作されたキャラクターではありません。江戸時代の弘化3年(1846年)に作られたとされる史料に姿と伝承が残っています。

海中から光るものが現れ、調査へ向かった役人の前にアマビエと名乗る存在が現れたとされます。豊作が続くことや疫病の流行を予言し、自分の姿を写して人々に見せるよう告げたという内容が伝えられています。

2020年の新型コロナウイルス感染拡大時、この「疫病」と「自分の姿を人々に見せる」という要素がSNS時代と偶然非常に相性が良く、イラストを描いて投稿する「アマビエチャレンジ」へつながりました。

2020年春までは一般にはほとんど知られていなかった

現在では名前を知っている人も多いアマビエですが、ブーム以前は妖怪に詳しい人などを除けば、かなり知名度の低い存在でした。

JTB総合研究所が2020年のブーム初期に行った「アマビエに関する調査」では、最初のTwitter投稿から約1か月後でも「言い伝えの内容まで知っている」という回答は6.5%で、「聞いたことがある」まで含めても23.4%でした。さらに、アマビエを知っていた人のうち6割弱が「1か月以内に知った」と回答しています。[参照] JTB総合研究所・アマビエに関する調査

つまり、2020年初頭の時点では「アマビエって何?」「初めて聞いた」という人が多数派だったことになります。その後わずかな期間で全国的な知名度を得たという、かなり珍しい流行でした。

厚生労働省までアマビエを採用して一気に全国区になった

SNS上のイラスト投稿だけで終わらなかったことも、アマビエが社会現象になった理由です。2020年4月9日には厚生労働省が新型コロナウイルス感染拡大防止の啓発にアマビエのイラストを使用しました。

その後、企業や自治体、神社仏閣、菓子メーカー、クリエイターなどが次々とアマビエをモチーフにした商品や作品を展開しました。「疫病退散」という分かりやすい意味と、魚・鳥・人間などを組み合わせたような独特の姿が、コロナ禍を象徴するキャラクターとして受け入れられたのです。

2020年の「SNS流行語大賞」でも「アマビエ」は3位となりました。当時の知名度上昇が一部の妖怪ファンだけにとどまらず、非常に大きなSNS現象になっていたことが分かります。

ではアマビエは「もういなくなった」のか

アマビエが消滅したわけではありません。江戸時代から伝わる妖怪・怪異としてのアマビエは、現在も民俗学や妖怪文化の題材として存在しますし、イラストやグッズなどにも使われています。

ただし、2020年ほど日常生活で見かけなくなったのは自然な変化です。現代のアマビエ人気は新型コロナウイルスという社会状況と「疫病退散」の伝承が強く結び付いていました。感染対策が社会最大級の話題だった時期にはアマビエも注目され、その状況が落ち着くにつれて露出も減少したと考えられます。

つまり「アマビエがいなくなった」というより、2020年に発生した社会現象としてのアマビエブームが落ち着いたと表現する方が正確です。

「アマビエ」を「甘エビ」と思った人は70%以上いる?

「アマビエ」という音を初めて聞いたとき、「甘エビ(あまえび)」を連想するのは言葉遊びとして十分あり得ます。「アマビエ」と「アマエビ」は、文字を並べても非常によく似ています。

アマビエ=ア・マ・ビ・エ、甘エビ=ア・マ・エ・ビで、「ビ」と「エ」の位置が入れ替わったような形です。そのため、聞き慣れていない「アマビエ」を、よく知っている「甘エビ」へ脳内で置き換えてしまった人がいたとしても不自然ではありません。

しかし、「初めて聞いた人の70%以上が甘エビと思った」「70%以上が言い間違えた」と証明する全国的・代表性のある調査結果は確認できませんでした。したがって、70%以上という数字を事実として扱う根拠はありません。

アマビエの認知度調査はあるが「甘エビ率」の調査とは別

アマビエについては実際にいくつかの学術研究や認知度調査があります。しかし、そこで調べられているのは「アマビエを知っているか」「どこで知ったか」「アマビエに対してどのような態度を持つか」といった内容が中心です。

例えばJTB総合研究所の調査では、2020年3月頃の段階で「聞いたことがある」まで含む認知が23.4%だったことが示されています。また、心理学分野の研究でも、新型コロナ禍におけるアマビエへの関心や行動などが調査されています。[参照] J-STAGE・新型コロナウイルス禍における妖怪「アマビエ」に関する研究

一方、これらは「アマビエを甘エビと聞き間違えた人の割合」を調べた調査ではありません。認知度23.4%など別の統計を、「甘エビと間違えた割合」に読み替えることもできません。

「自分も甘エビだと思った」という人が多く見える理由

SNSでは「アマビエって最初、甘エビかと思った」のような投稿が目立つことがあります。しかし、SNS上で同じ体験談を多数見かけることと、日本人全体の70%以上がそうだったことは別問題です。

「甘エビと聞き間違えた」という話は面白く、投稿したり共有したりしやすい一方、「最初から普通にアマビエと聞き取った」という人はわざわざ投稿しない可能性があります。そのため、SNSの投稿数だけから実際の人口比率を推測すると大きく偏ることがあります。

例えば100件の「甘エビだと思った」という投稿を見つけても、それを見た何万人もの人のうち何人が実際に聞き間違えたのかは分かりません。70%という割合を出すには、対象者や質問方法を定めた調査が必要です。

アマビエが急速に流行して急速に見かけなくなったように感じる理由

アマビエ現象の特徴は、SNSによって非常に短期間で認知が広がったことです。JTB総合研究所の調査では、ブーム初期にアマビエを「1か月以内に知った」と答えた人のうち、約6割がSNS・Webサイトから知ったとされています。

Twitterでイラストが投稿され、それをニュース番組が取り上げ、企業が商品化し、さらにSNSへ写真が投稿されるという循環が起きました。その結果、もともと非常にマイナーだった妖怪が数か月という短期間で全国区になりました。

反対に、ブームの中心だった新型コロナと疫病退散という社会的テーマが弱まれば、メディアや企業がアマビエを扱う頻度も下がります。急速に有名になった分、ブーム後の落差も大きく感じやすいのです。

まとめ:アマビエは消えたのではなく2020年の大ブームが落ち着いた

アマビエは「もういなくなった」わけではありません。もともと1846年の史料に残る妖怪であり、現在も妖怪文化の一つとして存在しています。ただ、2020年の新型コロナ禍で発生した爆発的なアマビエブームが落ち着いたため、日常生活で目にする機会が大幅に減ったと考えるのが自然です。

時期についても、現代の大ブームは2019年ではなく2020年2月末のTwitter投稿を大きなきっかけとして広がったことが資料から確認できます。4月には厚生労働省の啓発にも登場し、年末にはSNS流行語大賞3位になるほど知られるようになりました。

そして「アマビエを初めて聞いた人の70%以上が甘エビだと思った」という数字については、裏付けとなる信頼できる統計を確認できません。言葉が非常によく似ているため実際に聞き間違えた人はいたと考えられますが、その割合を70%以上と断定することはできません。

したがって、現在分かっている範囲を簡潔にまとめるなら、「アマビエは今もいる。ただし大流行したのは2019年ではなく2020年。そして『甘エビと間違えた人が70%以上』という統計的根拠は確認されていない」という整理になります。

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