小説原稿などを「|親文字《ふりがな》」のような青空文庫形式で管理していると、そのルビ情報をInDesignや一太郎へそのまま持ち込みたい場面があります。しかし、InDesignと一太郎では青空文庫形式の扱いが大きく異なるため、「テキストを貼り付ければ自動でルビになる」と考えるとつまずきやすいポイントです。
特に注意したいのが、InDesignについて紹介されている「青空文庫風の記法からルビを自動化する方法」です。InDesignが標準機能として「|親文字《ふりがな》」を読み取って自動的にルビへ変換する、という意味ではありません。紹介されているワークフローでは、タグ付きテキストをInDesignへ入れたあと、専用のJavaScript(JSX)を実行して本物のInDesignルビへ変換しています。
一方、一太郎には小説投稿サイトなどで利用されるルビ記法を解析し、テキスト読み込み時に一太郎のふりがなへ変換する機能があります。ただし、青空文庫本来の記法と一太郎が認識する記号には注意点があります。ここでは両者の違いと、変換されないときに確認したいポイントを整理します。
- 結論:InDesignは青空文庫形式をそのまま自動ルビ変換するわけではない
- 紹介されているInDesignの記事は「スクリプトで変換する方法」
- 青空文庫本来のルビ記法を理解しておく
- 一太郎にはテキスト読込時のふりがな自動設定機能がある
- 一太郎で変換されない最大のチェックポイントは「|」と「|」
- まず1行だけで動作テストすると原因を特定しやすい
- 「貼り付け」と「テキストファイル読み込み」の違いにも注意する
- pixiv形式だけ正常に動くなら青空文庫形式をpixiv形式へ変換する方法もある
- InDesignへ持っていくなら「タグを残して最後に変換」が実用的
- 一太郎とInDesignの違いを整理
- まとめ:InDesignはスクリプト変換、一太郎は記号の違いをまず確認
結論:InDesignは青空文庫形式をそのまま自動ルビ変換するわけではない
Adobe InDesign自体には、日本語の「ルビ」機能があります。文字を選択して文字パネルからルビを設定でき、モノルビ・グループルビ、位置、サイズ、間隔などを細かく指定できます。Adobe公式ヘルプでも日本語ルビの設定方法が案内されています。[参照] Adobe「InDesignでルビテキストを追加して書式設定する」
しかし、これは「青空文庫形式のTXTを読み込めば、|親文字《ふりがな》を自動認識してInDesignのルビ属性へ変換する」という機能ではありません。通常のテキストとして配置・ペーストすれば、基本的には記号を含んだ文字列として取り込まれます。
InDesignにはXMLの読み込み機能もありますが、これも青空文庫記法専用の読み込み機能ではありません。XMLのタグ構造とInDesign文書側の構造を対応させて利用するための機能です。[参照] Adobe「XMLデータのInDesignへのインポート」
紹介されているInDesignの記事は「スクリプトで変換する方法」
質問で参照されている記事では、青空文庫に似た「|漢《かん》」形式のタグ付きテキストを利用していますが、重要なのはその後の処理です。記事では、生成したタグ付きテキストをInDesignのテキストフレームへペーストし、最後に「ruby-converter.jsx」というスクリプトを実行してInDesignのルビへ変換しています。[参照] 紹介されているnote記事
つまり処理のイメージは「青空文庫形式のTXT → InDesignが自動認識」ではなく、「タグ付きテキスト → InDesignへペースト → JSXスクリプトがタグを解析 → InDesignのルビ属性へ変換」です。
例えばInDesignへ「|東京《とうきょう》」という文字列を普通に貼り付けただけなら、それ自体が自動的に「東京」の上へ「とうきょう」と表示されるとは限りません。対応する変換スクリプトを動かすことで、タグ部分を実際のルビ属性へ置き換えるという考え方です。
青空文庫本来のルビ記法を理解しておく
青空文庫では、ルビを「親文字《ふりがな》」のように記述します。また、親文字の開始位置を明確にする必要がある場合は「|」を使用します。
例えば「霧の|ロンドン警視庁《スコットランドヤード》」なら、「ロンドン警視庁」全体が親文字で、「スコットランドヤード」がルビです。青空文庫の公式作業マニュアルでも、このルビ記法が定められています。[参照] 青空文庫作業マニュアル
ここで非常に重要なのが、青空文庫本来の区切り記号「|」は全角文字であるということです。青空文庫の公式マニュアルには、ルビの区切りに使用する「|」は全角文字を使うよう明記されています。
ところが、外部ソフトが「青空文庫風」「小説投稿サイト形式」として取り込む際には、必ずしも青空文庫本来の全角記号をそのまま認識するとは限りません。この違いが一太郎で変換されない原因になることがあります。
一太郎にはテキスト読込時のふりがな自動設定機能がある
一太郎には「テキスト読込時のふりがな自動設定」が搭載されています。ジャストシステムの現行製品比較ページでも、小説投稿サイトのテキストを読み込む際、ふりがなや傍点の形式で記述された文字列を解析し、一太郎文書上で自動設定できる機能として案内されています。[参照] ジャストシステム 一太郎機能比較
この機能は一太郎2018で導入されたもので、「|親文字《ふりがな》」などの小説投稿向け記法を一太郎内部のルビへ変換する用途が想定されています。当時の一太郎2018の紹介でも、読み込むふりがなの形式を設定して、小説投稿サイト用テキストからふりがなを再現できることが確認できます。[参照] ITmedia 一太郎2018レビュー
したがって、対応バージョンの一太郎を使っているのであれば、設定そのものの方向性は正しいと考えられます。それでも変換されない場合は、まず区切り記号を確認する必要があります。
一太郎で変換されない最大のチェックポイントは「|」と「|」
見た目がよく似ているため非常に分かりにくいのですが、次の2文字は別の文字です。
| 文字 | 種類 | 主な用途 |
|---|---|---|
| | | 全角の縦線 | 青空文庫本来のルビ区切り |
| | | 半角ASCIIの縦線 | 一部の小説投稿形式・一太郎での取り込みに使用されることがある |
一太郎2018を使った既存の検証例では、青空文庫やカクヨム系の「|親文字《ふりがな》」をそのまま読み込ませても変換されず、全角の「|」を半角の「|」へ置換すると取り込めたという報告があります。
例えば元データが「|東京《とうきょう》」なら、「|東京《とうきょう》」へ変更してから試します。見た目はほとんど同じですが、コンピューター上では別コードの文字なので、パーサーが完全一致で判定している場合は結果が変わります。
なお、これは青空文庫側の記法が間違っているという意味ではありません。青空文庫の公式仕様では全角「|」が正しいため、「正式な青空文庫記法」と「一太郎が取り込み用に想定している記法」が完全には一致しないケースがあると理解すると分かりやすいでしょう。
まず1行だけで動作テストすると原因を特定しやすい
長い原稿をいきなり変換するのではなく、新規文書で短いサンプルを使ってテストすると原因を絞り込めます。
例えば次の2種類を別々に試します。
|東京《とうきょう》
|東京《とうきょう》
一太郎側で「テキスト読み込み時にふりがなを自動的に設定する」を有効にし、「読み込むふりがなの形式」を該当する形式にしたうえでテストします。半角「|」のほうだけ変換されるなら、元原稿の縦線を一括置換することで対応できる可能性があります。
一方、どちらも変換されない場合は、一太郎のバージョン、選択している読み込み形式、「《」「》」が正しい二重山括弧になっているか、テキストとして読み込んでいるかなどを確認します。「≪ ≫」や「〈 〉」は見た目が似ていますが別文字です。
「貼り付け」と「テキストファイル読み込み」の違いにも注意する
設定名が「テキストファイル読込時にふりがなを自動的に設定する」となっているため、「貼り付けでは使えないのでは」と疑問に思いやすいところです。一太郎2018登場時には、テキストファイルからの読み込みに加えて、クリップボード経由での取り込みに対応したと紹介されています。
ただし、バージョンや貼り付け方、編集モードなどによって挙動が異なる可能性があります。そのため、貼り付けで変換されない場合は、テスト用の内容をTXTとして保存し、「ファイルを開く」など正式なテキスト読み込み経路でも試すと原因を切り分けられます。
特に「pixiv特殊タグでは貼り付けるだけで変換できるが、|親文字《ふりがな》だけ変換されない」という状態なら、貼り付け機能そのものよりも、縦線や括弧の文字コード・記法の一致を先に疑う価値があります。
pixiv形式だけ正常に動くなら青空文庫形式をpixiv形式へ変換する方法もある
一太郎でpixiv特殊タグの読み込みが確実に動作している環境なら、原稿を一時的にpixiv形式へ変換して取り込む方法もあります。
pixiv系のルビ表記では「[[rb:親文字 > ふりがな]]」形式が使われることがあります。例えば「|東京《とうきょう》」を「[[rb:東京 > とうきょう]]」のように変換し、一太郎側をpixiv特殊タグの読み込み設定にして取り込む方法です。
数百、数千か所のルビを手作業で直す必要はありません。正規表現に対応したテキストエディターなどを使えば、「|親文字《ふりがな》」を別形式へ一括変換できます。ただし原稿中に複雑な記法や例外がある場合は、必ずコピーしたファイルで実行し、変換後の結果を校正してください。
InDesignへ持っていくなら「タグを残して最後に変換」が実用的
最終目的がInDesignで書籍を組版することであれば、原稿段階では「|親文字《ふりがな》」のように人間が確認しやすいテキスト形式を維持し、InDesign上で最後にルビ属性へ変換するワークフローにはメリットがあります。
例えば原稿に「|五月雨《さみだれ》」と残っていれば、読みの修正は普通のテキスト編集として行えます。InDesignのルビ属性へ変換した後よりも、検索・置換や一括校正をしやすい場合があります。
そのうえで、InDesign用スクリプトを使ってタグを実際のルビへ変換します。Adobe InDesignはルビ自体をネイティブに扱えるため、変換後はモノルビ・グループルビ、ルビサイズ、位置、文字間隔などをInDesign上で調整できます。
ただし第三者が作成したJSXスクリプトはAdobe標準機能ではありません。導入する場合はスクリプトの配布元、対応するInDesignバージョン、処理内容を確認し、元原稿とInDesignファイルのバックアップを取ってから実行するのが安全です。
一太郎とInDesignの違いを整理
| 項目 | 一太郎 | InDesign |
|---|---|---|
| 日本語ルビ機能 | あり | あり |
| 小説投稿形式の自動解析 | 対応機能あり | 青空文庫記法専用の標準変換機能ではない |
| 「|親文字《ルビ》」の扱い | 設定・記号によって自動変換可能 | 通常の貼り付けだけでは文字列として扱われる |
| 大量のタグ付きルビ変換 | テキスト読込時の自動設定を利用 | 変換スクリプトなどを利用する方法がある |
| 注意点 | 全角「|」と半角「|」など記法の一致 | スクリプトを使う処理と標準機能を混同しない |
一太郎は「投稿サイト形式のテキストとワープロ文書を行き来する」用途に便利な機能を備えています。一方のInDesignは、本格的な組版とルビの細かなレイアウト調整には強いものの、青空文庫記法を読み取る処理は別途用意する、と考えると両者の役割を理解しやすくなります。
まとめ:InDesignはスクリプト変換、一太郎は記号の違いをまず確認
青空文庫形式のルビ付きテキストをInDesignと一太郎で扱う場合は、「どちらも貼り付けるだけで同じように自動変換される」と考えないことが重要です。
InDesignは日本語ルビそのものには標準対応していますが、「|親文字《ふりがな》」という青空文庫記法を標準機能だけで自動解析してルビにするという意味ではありません。紹介されているnote記事では、タグ付きテキストを貼り付けたあとに専用のruby-converter.jsxを実行して、InDesignのルビへ変換しています。
一太郎にはテキスト読込時のふりがな自動設定機能がありますが、変換されない場合は最初に「|」と「|」の違いを確認しましょう。青空文庫公式仕様では全角「|」ですが、一太郎の取り込みでは半角「|」へ置換することで認識されるケースがあります。「|東京《とうきょう》」のような短いテストデータを作り、動作確認してから原稿全体を変換すると安全です。
pixiv特殊タグでは正常に取り込める環境なら、それも有力な回避策です。大量の原稿では「青空文庫形式を保存用の原本として維持し、一太郎用・InDesign用に必要な形式へコピーを自動変換する」という運用にすると、特定ソフトの仕様へ原稿全体を依存させずに管理しやすくなります。


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