Adobe Illustratorで文字を選択すると、実際に見えている文字よりもバウンディングボックスが上下に大きく表示され、特に文字の下側に「何もない余白」ができることがあります。久しぶりにIllustratorを使ったときに、「昔からこんな仕様だった?」「文字ぴったりのサイズにできないの?」と戸惑いやすいポイントです。
結論からいうと、文字のバウンディングボックスが字形そのものではなく、フォントが持つEmボックスなどの文字情報を基準にしていることが主な理由です。そのため、下側の空間が見えること自体は必ずしも不具合ではありません。
一方、目的が「文字と図形を見た目どおりに整列したい」のであれば、現在のIllustratorには「字形の境界に整列」という便利な機能があります。また、エリア内文字を使っているために余白が大きい場合は、ポイント文字への変更など別の対処が必要です。症状ごとに確認していきましょう。
なぜIllustratorの文字には下側の余白があるのか
Illustrator上の文字は、画面に見えている黒い字形だけで高さが決まっているわけではありません。フォントには文字を配置するための基準となる領域があり、実際の字形より広い範囲を持つ場合があります。
Adobeも、文字パネルに表示されるフォントサイズには文字を囲むEmボックスが含まれるため、実際に見える字形のサイズとは異なることを説明しています。現在のIllustratorでは、フォント高さの基準として「Em Box」「Cap Height」「x-Height」「ICF Box」などを扱えます。[参照] Adobe「Modify font height in Illustrator」
例えばアルファベットの「ABC」だけを入力しても、フォント側ではgやp、yのようにベースラインより下へ伸びる文字を配置するための領域などが考慮されています。そのため、実際の文字の下に何も描かれていなくても、選択範囲として空間が見えることがあります。
つまり、バウンディングボックスの下に空間がある=不要な改行や透明オブジェクトが存在するとは限りません。フォントの設計に由来する正常な状態である可能性があります。
図形との整列が目的なら「字形の境界に整列」を使う
文字の下側の余白が問題になる代表的な場面が、文字と長方形・アイコンなどを整列するときです。通常の境界を基準に整列すると、数値上は中央なのに「文字だけ少し上に見える」「下に空間があるせいで位置が合わない」と感じることがあります。
この場合、現在のIllustratorでは字形そのものの境界を使って整列できます。
「ウィンドウ」→「整列」で整列パネルを開き、パネルの詳細オプションから「字形の境界に整列」を利用します。テキストの種類に応じてポイント文字またはエリア内文字を対象にできます。
Adobe公式ヘルプでも、文字とオブジェクトを字形の境界を基準に整列する機能が案内されています。[参照] Adobe「Illustratorでテキストを行揃え」
「バウンディングボックスそのものを無理に文字ぴったりにしたい」のではなく、「図形と見た目どおりに揃えたい」のであれば、この機能を使うのが現在のIllustratorでは合理的です。
ポイント文字とエリア内文字の違いも確認する
Illustratorの文字には「ポイント文字」と「エリア内文字」があり、見た目が似ていても扱い方が異なります。
ポイント文字は、文字ツールでアートボード上をクリックして入力するタイプです。クリックした位置から文字列が伸びていき、文字を増減するとテキストオブジェクトもそれに応じて伸縮します。
一方のエリア内文字は、文字ツールでドラッグして長方形の領域を作るなどして、その「箱」の中へ文章を流し込むタイプです。Adobeによると、エリア内文字では境界に達した文字が定義されたエリア内に収まるよう自動的に折り返されます。[参照] Adobe「ベクターアートワークへのテキストの追加」
| 種類 | 作り方の例 | 主な用途 |
|---|---|---|
| ポイント文字 | 文字ツールでクリックして入力 | タイトル、ロゴ、短い文字列など |
| エリア内文字 | 文字エリアを作って入力 | 本文、説明文、長文レイアウトなど |
短い見出しやロゴなのに大きなテキストエリアが残っている場合は、エリア内文字になっていないか確認するとよいでしょう。
エリア内文字の下に大きな空白がある場合の直し方
文字の数ミリ程度下に余白があるというレベルではなく、選択すると巨大な長方形が表示され、その下半分が空白になっている場合は、フォントのEmボックスではなく「エリア内文字」のテキストエリアそのものが大きい可能性があります。
エリア内文字では、入力されている文字が少なくてもテキストエリア自体の高さは残ります。そのため1行しか文字がなくても、高さ100mmのテキストエリアを作っていれば大きな空白が表示されます。
この場合は、選択ツールでテキストオブジェクトを選択し、バウンディングボックスのハンドルをドラッグしてテキストエリアを小さくできます。Adobeも、エリア内文字についてバウンディングボックスのコーナーやエッジをドラッグしてテキストエリアを変更できると案内しています。[参照] Adobe「テキストエリアをサイズ変更」
短い文字列で折り返し機能が必要ないなら、ポイント文字へ変換して使う方法もあります。
ポイント文字とエリア内文字は現在のIllustratorで変換できる
「昔作ったデータなので、なぜエリア内文字になっているのか分からない」という場合でも、現在のIllustratorではテキストタイプを確認しながら変換できます。
Adobeの現在のIllustratorでは、選択ツールでポイント文字を選択するとエリア内文字へ変換するオプションが表示され、エリア内文字を選択した場合にはポイント文字へ変換できます。[参照] Adobe「Illustratorのコンテキストタスクバー」
例えばロゴの「SAMPLE」という1行だけを配置したいのであれば、ポイント文字のほうが扱いやすい場合があります。一方、チラシの説明文を決められた幅で折り返したいならエリア内文字が適しています。
ただし、ポイント文字に変更してもフォント自体が持つ上下の領域まで完全になくなるわけではありません。「巨大なテキストエリア」と「フォント由来の上下余白」は別問題として考えるのがポイントです。
エリア内文字の「外枠からの間隔」もチェックする
エリア内文字を使用する必要があり、文字とテキストエリアとの距離がおかしい場合は、「エリア内文字オプション」も確認します。
エリア内文字オブジェクトを選択して「書式」→「エリア内文字オプション」を開くと、「外枠からの間隔」などを設定できます。この値が設定されている場合は、文字とテキストエリアの境界との間に意図的なマージンが作られます。
Adobe公式ヘルプでも、「外枠からの間隔」でテキストとバウンディングボックスの間のマージンを定義できると説明されています。[参照] Adobe「テキストにマージンを追加し、最初のベースラインを調整」
ただし、ここで設定するマージンと、ポイント文字を選択したときに見えるフォント由来の上下スペースは別物です。ポイント文字でも下側に少し空間が見える場合、エリア内文字オプションを探しても解決しません。
フォントを変えると余白の見え方が変わることもある
同じ文字サイズでも、フォントを変更するとバウンディングボックスと実際の字形との距離が違って見える場合があります。これはフォントによって字形の設計や各種メトリクスが異なるためです。
そのため「このフォントだけ妙に下が空いている」という場合は、試しに別のフォントへ変更して比較すると原因を切り分けやすくなります。
現在のIllustratorでは文字パネルの詳細オプションからフォント高さのオプションを表示し、Em Boxのほか、英字の大文字を基準にするCap Height、小文字を基準にするx-Height、日本語などCJKフォントで利用されるICF Boxといった基準を扱えます。[参照] Adobe「Modify font height in Illustrator」
ただし、単にバウンディングボックス下側の余白を消したいという理由だけでフォント高さの設定を変更すると、文字サイズそのものの解釈やレイアウトへ影響します。既存デザインでは特に慎重に扱いましょう。
アウトライン化すれば文字ぴったりになるが、常用はおすすめしない
文字を「書式」→「アウトラインを作成」でアウトライン化すると、編集可能なテキストではなくベクターパスになります。そのため通常のテキストとはバウンディングボックスの扱いが変わり、字形そのものをオブジェクトとして操作できます。
ロゴの最終データなどでは便利ですが、バウンディングボックスの余白をなくすためだけにアウトライン化するのはおすすめできません。アウトライン化すると通常の文字として編集できなくなり、誤字修正や文章変更、フォント変更が面倒になるからです。
編集途中ではテキストのまま保持し、図形との位置合わせが目的なら「字形の境界に整列」を利用するほうが柔軟です。納品上の理由などでアウトラインが必要な場合は、編集可能な元データを別に保存してから行うと安全です。
症状別に見るおすすめの対処方法
| 症状 | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 文字の下に少し空間がある | フォントのEmボックスなど | 基本的には正常。整列目的なら字形の境界を利用 |
| 文字よりはるかに大きな箱が表示される | エリア内文字 | テキストエリアを縮小する |
| 短い1行なのに大きなテキストエリアがある | エリア内文字として作成されている | 必要ならポイント文字へ変換 |
| 文字と枠の間に一定の余白がある | 外枠からの間隔 | エリア内文字オプションを確認 |
| 中央揃えしたのに見た目がずれる | 通常の文字境界を基準に整列 | 「字形の境界に整列」を使う |
| 特定フォントだけ余白感が違う | フォントのメトリクス | 別フォントと比較して確認 |
特に重要なのは、「下に数ミリの余白がある」のか「文字とは無関係に巨大なテキストボックスがある」のかを区別することです。前者ならフォントの仕組み、後者ならエリア内文字が原因である可能性が高くなります。
まとめ:Illustratorの文字下の余白は不具合とは限らない
Illustratorで文字を選択したとき、バウンディングボックスの下に実際の字形より広い空間が見えることがあります。これはフォントが字形そのものだけでなく、Emボックスなどの文字配置に必要な情報を持っていることが主な理由で、必ずしも設定ミスや不具合ではありません。
文字と図形を見た目の境界で正確に揃えたい場合は、現在のIllustratorにある「字形の境界に整列」を使うのが有効です。単に整列のためだけなら、文字をアウトライン化する必要はありません。
一方、下側に数ミリどころではない巨大な空間がある場合は、エリア内文字になっていないか確認します。必要に応じてテキストエリアを縮小するか、短い文字列ならポイント文字へ変換します。さらにエリア内文字では「外枠からの間隔」も確認するとよいでしょう。
Illustratorの文字では「見えている字形」「フォントが持つ文字領域」「エリア内文字のテキストフレーム」という複数の境界が存在します。この違いを理解しておくと、久しぶりにIllustratorを使う場合でも、文字の位置合わせやバウンディングボックスの違和感を原因別に解決しやすくなります。

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