Autodesk Fusionで紙コップ、タンブラー、グリップ、容器などをモデリングするとき、テーパーした側面へ縦方向の凸モール(リブ)や凹溝を等間隔に配置したいことがあります。
1本ずつ接平面やオフセット平面を作り、押し出し、フィレット、コピー、不要部分の削除まで行う方法でも作成できますが、形状によっては工程をかなり減らせます。ポイントは、「縦リブを1本だけ作る→円形パターンでフィーチャを複製する」という考え方です。
さらに、テーパー面へ直接沿わせたい浅い凸部・凹部ならFusionの「エンボス(Emboss)」が便利です。断面形状を保ちながら縦方向へ伸ばす必要があるリブでは「スイープ(Sweep)」も候補になります。ここでは目的別に使い分ける方法を解説します。
- 最初に結論:1本作って円形パターンするのが基本
- 浅い凸モール・凹溝なら「エンボス」がシンプル
- エンボスで縦リブを1本作る手順
- 完成した1本を「円形パターン」で一周させる
- フィレットはパターン前と後のどちらがよい?
- 断面形状を重視する縦リブならスイープも有効
- テーパーに沿ってリブの向きを安定させたい場合はガイドサーフェスも使える
- 押し出し方式を使うなら「不要部削除」を減らす設計にする
- 円形パターンでは「ボディ」より「フィーチャ」が便利なことが多い
- リブの本数・幅・深さをユーザーパラメータにするとさらに楽
- 凸モール・凹溝・丸リブでおすすめ方法を使い分ける
- 円形パターンを使うと後から本数変更も簡単
- まとめ:紙コップの縦リブは「1本作成+円形パターン」でシンプルにできる
最初に結論:1本作って円形パターンするのが基本
紙コップのような回転体へ同じ縦リブを何本も配置するときは、最初から全部のリブを個別にモデリングする必要はありません。まず基準となるリブまたは溝を1本だけ作り、そのフィーチャを中心軸の周囲へ円形パターンします。
Fusionの「円形パターン」は、面、ボディ、フィーチャ、コンポーネントなどを指定した軸の周囲へ複製できる機能です。分布を「全体」にすると360度へ均等配置でき、個数も数値指定できます。[参照] Autodesk Fusion公式「円形パターンを作成する」
例えば24本の縦リブが必要なら、1本のリブを完成させてから「作成→パターン→円形パターン」を実行し、オブジェクトタイプを「フィーチャ」、軸を紙コップの中心軸、数量を24、分布を360度の「全体」に設定する、という流れが基本になります。
浅い凸モール・凹溝なら「エンボス」がシンプル
テーパーした紙コップ側面へ浅い縦長の凸部や凹部を付けたい場合、最初に試したいのがFusionの「エンボス(Emboss)」です。エンボスは2Dスケッチのプロファイルをソリッドボディの面へ適用し、指定した深さだけ盛り上げたり、へこませたりできる機能です。
Autodesk公式ヘルプでも、エンボスはスケッチプロファイルをソリッドボディに対してEmbossまたはDebossできる機能として説明されています。Embossなら材料を追加し、Debossなら材料を除去できます。[参照] Autodesk Fusion公式「Emboss a solid body」
つまり「凸リブなら追加」「凹溝なら削除」という処理をエンボス内で切り替えられるため、別ボディを作って結合・切り取りする工程を減らせます。
エンボスで縦リブを1本作る手順
まず紙コップ本体を回転などで作成します。次に、紙コップの中心軸を通る正面または側面の基準平面など、縦リブの形状を描きやすい平面へスケッチを作ります。
スケッチには細長い長方形、角丸長方形、カプセル形状など、リブにしたい輪郭を1本だけ描きます。例えば高さ80mm、幅3mm程度の細長いプロファイルです。実際の寸法はコップのサイズに合わせて調整します。
スケッチを終了したら「ソリッド→作成→エンボス」を選択し、先ほどの細長いプロファイルと紙コップのテーパー側面を指定します。凸モールならEmboss、凹溝ならDebossを選び、Depthで高さまたは深さを調整します。
エンボスはスケッチと関連付けられるため、パラメトリックデザインでは後から元スケッチを変更するとエンボス形状も追従します。リブの幅や長さを後から変更したいモデルにも向いています。
完成した1本を「円形パターン」で一周させる
1本目のリブまたは溝が完成したら、同じ操作を何十回も繰り返すのではなく円形パターンを使います。「ソリッド→作成→パターン→円形パターン」を選択します。
オブジェクトタイプは、可能であれば「フィーチャ」を使い、タイムラインに作成されたエンボスなどの元フィーチャを指定します。次にAxisへ紙コップの中心軸を指定します。
例えば30本ならQuantityを30、DistributionをFullに設定します。Fusionは指定した軸の360度周囲へ30個を均等配置します。Autodesk公式によると円形パターンではFaces、Bodies、Features、Componentsなどを複製でき、Fullでは360度へ配置できます。[参照] Autodesk Fusion公式「Create a circular pattern」
これならリブの本数を20本から24本へ変更したくなっても、円形パターンのQuantityを変更するだけで済みます。パラメトリックCADでは、後から変更しやすいモデルにしておくことが大きなメリットです。
フィレットはパターン前と後のどちらがよい?
凸リブの角を丸めたい場合は、リブを作成したあとフィレットを追加し、エンボス・押し出しとフィレットをまとめて円形パターンの対象にする方法があります。
例えば「リブ作成→リブの縦エッジにフィレット→円形パターン」という順番です。円形パターンの対象をFeaturesにして、リブを作ったフィーチャと必要なフィレットを選択します。
ただし形状が複雑だとフィレットを含むパターンが計算エラーになる場合があります。その場合は「リブ作成→円形パターン→最後に必要なエッジへフィレット」という順番も試します。どちらが安定するかは、リブの断面、テーパー角、フィレット半径などによって変わります。
断面形状を重視する縦リブならスイープも有効
エンボスは面に沿った浅い凸部・凹部を作るのに便利ですが、「半円形の断面を持つ丸いモールを縦方向へ走らせたい」など、断面形状を明確に管理したい場合はスイープが適しています。
Fusionのスイープは、スケッチプロファイルや平面フェイスなどを指定したパスに沿って移動させ、ソリッド形状を作る機能です。操作にはJoinなども選択できるため、作ったリブを紙コップ本体へ結合できます。[参照] Autodesk Fusion公式「Sweep reference」
例えばリブ断面として直径2mm程度の円や半円形状を作り、紙コップのテーパー方向に沿った線をPathとしてスイープします。これで丸みのある縦モールを1本作り、完成したフィーチャを中心軸周囲へ円形パターンできます。
テーパーに沿ってリブの向きを安定させたい場合はガイドサーフェスも使える
単純なスイープで断面の向きが思った通りにならない場合、Fusionには「Path + Guide Surface」というスイープ方法があります。パスだけでなくガイドとなるサーフェスを指定し、その面を基準にプロファイルの向きを制御できます。
Autodesk公式ヘルプでは、Path + Guide Surfaceは指定したガイドサーフェスに従ってスイープ形状の向きを制御する機能として説明されています。[参照] Autodesk Fusion公式「Sweep a solid body」
紙コップのような単純な円錐台なら必ず必要になる機能ではありませんが、側面が曲線的に膨らんでいる容器や、単純な直線テーパーではないグリップ形状へリブを沿わせる場合には有効です。
押し出し方式を使うなら「不要部削除」を減らす設計にする
既存の押し出し方式でも、モデリングの組み方を整理すれば工程を減らせます。重要なのは、最初から完成形状に近い1本のリブを作り、それをフィーチャとしてパターン化することです。
例えば接平面上の長方形からリブを押し出す場合でも、1本目を本体へJoinしてから、その押し出しフィーチャを円形パターンすれば、コピーしたボディを一つずつ処理する必要はありません。
凹部の場合も同様で、1本のCutフィーチャを作り、そのCutそのものを円形パターンのFeaturesとして複製する考え方が使えます。つまり「形状をコピーしてから全部切る」のではなく、「切ったという処理そのものをコピーする」のがFusionらしいパラメトリックな作り方です。
円形パターンでは「ボディ」より「フィーチャ」が便利なことが多い
Fusionの円形パターンにはFaces、Bodies、Featuresなど複数の対象タイプがあります。紙コップへ一体化したリブや切り込んだ溝を複製する場合は、Featuresが扱いやすいことが多いです。
例えばタイムラインに「Emboss1」があるなら、そのEmboss1を円形パターンの対象として選択します。押し出しによる溝なら「Extrude」のCutフィーチャを選択します。
Fusionの円形パターンにはFeaturesを複製する際のCompute TypeとしてOptimized、Identical、Adjustがあります。Autodesk公式ではOptimizedが最も高速で、Identicalは元フィーチャと同一結果を複製し、Adjustは各インスタンスを個別に計算するため最も遅い方式と説明されています。単純な対称形状ならまずOptimizedを試し、エラーが出る場合に他方式を検討できます。[参照] Autodesk Fusion公式「Circular Pattern」
リブの本数・幅・深さをユーザーパラメータにするとさらに楽
紙コップのデザインを何度も変更するなら、リブの寸法を直接入力するだけでなくユーザーパラメータとして管理すると便利です。
例えば「CupHeight」「RibWidth」「RibDepth」「RibCount」などのパラメータを作り、スケッチ寸法、エンボス深さ、円形パターンの数量へ割り当てます。するとデザイン変更時に各フィーチャを一つずつ開かなくても、主要な数値をまとめて変更できます。
試作品Aは24本・深さ1mm、試作品Bは32本・深さ0.7mmといったバリエーションを検討する場合にも有効です。Fusionの強みであるパラメトリックモデリングを生かせます。
凸モール・凹溝・丸リブでおすすめ方法を使い分ける
最適なコマンドは作りたい断面によって変わります。すべてを押し出しで処理するより、目的に合わせて使い分けるとタイムラインを短くできます。
| 作りたい形状 | おすすめ方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| テーパー面の浅い凸リブ | Emboss+Circular Pattern | 面に沿わせやすく工程が少ない |
| テーパー面の浅い凹溝 | Deboss+Circular Pattern | 切削用ボディを別に作る必要を減らせる |
| 丸棒状・半円状の縦モール | Sweep+Circular Pattern | リブ断面を管理しやすい |
| 単純な角形リブ | Extrude+Circular Pattern | 従来の押し出しでもフィーチャ複製で簡略化できる |
| 複雑な曲面に沿うリブ | Sweep+Guide Surface | 曲面に応じた向きを制御しやすい |
紙コップのような単純な円錐台側面へ縦長の浅い凹凸を多数作るのであれば、最初に試したいのは「Emboss/Debossで1本→Circular Pattern」という構成です。
円形パターンを使うと後から本数変更も簡単
円形パターンを使うメリットは作業時間だけではありません。後から形状を変更するときにも強みがあります。
例えば手作業で30本のリブを作ったあと「やはり36本にしたい」となれば修正が大変です。一方、円形パターンならQuantityを30から36へ変更するだけで再配置できます。
元となる1本のリブ幅を変更すれば複製されたリブにも反映されます。この「元形状を一つ管理し、繰り返しはパターンへ任せる」という考え方は、容器の滑り止め、ノブのローレット状形状、放熱フィン、歯車状部品などにも応用できます。
まとめ:紙コップの縦リブは「1本作成+円形パターン」でシンプルにできる
Fusionで紙コップのテーパー側面へ縦方向の凸モールや凹部を付ける場合、接平面、オフセット面、押し出し、コピー、不要部削除をすべて繰り返す必要はありません。
浅い凹凸なら、スケッチで縦長プロファイルを1本作る→EmbossまたはDebossでテーパー面へ適用→そのフィーチャを中心軸の周囲へCircular Patternという方法がシンプルです。
丸みのあるモールなど断面形状を正確に作りたい場合はSweepを使って1本作り、それをCircular Patternします。既存の押し出し方式を続ける場合でも、完成したCutやJoinのフィーチャ自体を円形パターンすれば、手作業のコピーや不要部分の削除を減らせます。
Fusionでは同じ形状を何度も直接作るより、「元となるフィーチャを1個だけ作り、パターンで複製する」構成にすると、モデルがシンプルになり、リブの本数・幅・深さを後から変更する作業も大幅に楽になります。


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