Affinityで作成したデザインをAdobe Illustratorで編集したい場合、PDFを書き出すだけでは期待した状態にならないことがあります。特に写真・背景・装飾などを個別に編集したい場合、PDFの仕様や書き出し設定によっては1枚の画像として扱われたり、複雑なクリッピンググループになったりします。この記事では、AffinityからIllustratorで可能な限り編集しやすいデータを渡すための書き出し方法と、PDF以外の適した形式について解説します。
AffinityのPDFがIllustratorで完全編集できない理由
AffinityからPDFを書き出す際に「レイヤーを含める」を有効にしても、Illustratorで元のレイヤー構造が完全に再現されるとは限りません。これはAffinityとIllustratorでPDFの解釈方法や内部データの扱いが異なるためです。
PDFは本来、印刷や閲覧を目的とした汎用形式であり、Illustratorのネイティブ編集形式であるAIファイルのように、すべてのオブジェクト構造を完全保存する形式ではありません。
例えばAffinity内で「背景レイヤー」「写真レイヤー」「装飾レイヤー」に分かれていても、PDF書き出し時に画像がラスタライズされたり、透明効果が統合されたりすると、Illustratorでは1つの画像や複雑なグループとして読み込まれる場合があります。
AffinityからIllustrator向けPDFを書き出す基本設定
Illustratorで編集しやすいPDFを作成する場合は、Affinity側でできるだけベクター情報を維持する設定にします。
推奨される設定例は以下の通りです。
- PDF形式:PDF/X-4
- レイヤーを含める:オン
- 非表示レイヤーを含める:必要に応じて設定
- ラスタライズ:なし
- テキスト:必要に応じてカーブ化
- カラーモード:CMYK
- 裁ち落とし:印刷仕様に合わせる
ただし、この設定でも写真や透明効果を含むデザインでは完全な編集状態を保証できません。特に大判印刷用データでは、Illustrator側で調整できる範囲が制限されることがあります。
Illustratorで編集しやすくするためのAffinity側の準備
PDFを書き出す前に、Affinityファイル内の構造を整理しておくことが重要です。複雑な効果やフィルターを多用すると、PDF化した際に画像化される可能性があります。
例えば横断幕デザインの場合、文字はカーブ化してベクター化し、単純な図形はそのまま保持します。一方、写真や影、ぼかしなどの効果は完全な編集対象として残すことが難しいため、Illustrator側で調整する必要がある部分を事前に確認しておきます。
また、レイヤー名を分かりやすく整理しておくと、Illustratorで読み込んだ後の確認作業が容易になります。
PDF以外でIllustrator編集に向いている書き出し形式
Illustratorで編集することを最優先する場合、PDF以外の形式が適している場合があります。
SVG形式
SVGはベクター情報を保持できるため、ロゴや単純な図形、イラストなどではIllustratorとの相性が良い形式です。
ただし、写真や複雑な透明効果、印刷向けのCMYK管理には向いていない場合があります。Web用素材やシンプルなデザインの受け渡しに適しています。
EPS形式
EPSは印刷業界で長く使われてきた形式で、Illustratorとの互換性があります。ベクター図形や文字を保持したい場合に有効です。
ただし、透明効果や新しい機能には制限があり、現在のIllustrator環境ではPDFの方が扱いやすいケースも増えています。
PSD形式
写真やレイヤー構造を保持したい場合はPSDが適しています。AffinityからPSDを書き出せば、画像レイヤーを分けた状態でPhotoshop系ソフトやIllustratorで扱えます。
例えば、背景写真、装飾画像、文字レイヤーを別々に編集したい場合は、PDFよりPSDの方が元の構造を維持しやすい場合があります。
Illustratorで開いた時に1枚画像になる場合の確認ポイント
PDFをIllustratorで開いた際に全体が画像化されている場合は、Affinity側でラスタライズが発生していないか確認します。
特に以下の要素は画像化の原因になりやすいです。
- 透明度を使った複雑な効果
- ぼかしや光彩などのフィルター
- 複雑なマスク処理
- 埋め込み画像の処理
また、Illustratorで「配置」した場合と「開く」で読み込んだ場合でも結果が異なることがあります。編集目的の場合は、開いた後にレイヤーパネルで各要素が分離されているか確認するとよいでしょう。
印刷会社へ入稿する場合のおすすめ方法
横断幕など印刷用途のデータでは、必ずしも完全編集可能なデータが必要とは限りません。印刷会社によってはPDF/X-4や入稿用PDFが推奨される場合があります。
もし後からIllustratorで修正する可能性がある場合は、Affinity元データを保存したまま、PDFとは別に編集用データとしてSVGやPSDなどを用意しておくと安心です。
例えば、文字修正やサイズ変更が発生する可能性がある横断幕では、納品用PDFと編集用データを分けて管理すると、再編集時のトラブルを防げます。
まとめ
AffinityからIllustratorで完全に編集可能なPDFを作成することは、デザイン内容によっては難しい場合があります。PDF/X-4やレイヤー保持設定は有効ですが、透明効果や画像処理によって一部が統合されることがあります。
ベクター要素を維持したい場合はPDFやSVG、写真やレイヤー構造を保持したい場合はPSDなど、目的に合わせて形式を選ぶことが重要です。印刷用データでは、完全な互換性よりも用途に合った形式で受け渡すことが、最もトラブルを減らす方法になります。


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