写真ではAIが人物や商品を自動認識し、ワンタップで背景を削除できるツールが一般的になっています。同じような処理は動画でも可能で、現在はグリーンバックを用意しなくても、AIがフレーム内の人物などを判別して背景を自動的に切り抜けるサービスがあります。
代表的な選択肢にはCapCut、Canva、Adobe Expressなどがあり、スマートフォンだけで作業できるものからPCのブラウザで利用できるものまであります。ただし、写真の背景削除と違って動画は多数のフレームを連続して処理するため、髪の毛、素早い動き、被写体と背景が似た色の場合などには切り抜きが不安定になることがあります。
ここでは、Photoroomの背景削除に近い感覚で動画を切り抜きたい場合に使える代表的な方法と、それぞれの特徴、きれいに切り抜くための撮影方法まで整理します。
動画もAIで背景を自動的に切り抜ける
従来、動画から人物だけを切り抜いて別の背景と合成するには、グリーンバックで撮影してクロマキー合成を行ったり、ロトスコープと呼ばれる方法で被写体を追跡したりする必要がありました。
現在のAI背景削除機能では、動画を読み込ませると人物などの被写体と背景を自動判別してくれます。そのため、SNS用の短い動画や商品紹介、解説動画などであれば、高度な映像編集技術を持っていなくても背景を交換できるようになっています。
「動画をアップロードする→背景削除を選ぶ→新しい背景を配置する」という写真編集に近い操作で使えるサービスもあります。ただし、機能の無料・有料区分や利用制限は変更されることがあるため、利用時には各サービスの最新プランを確認することが大切です。
CapCutはスマホで背景を切り抜きたい場合に使いやすい
スマートフォン中心で動画編集まで完結させたい場合に候補となるのがCapCutです。CapCutには動画の被写体を分離する背景削除系の機能があり、グリーンバックを使っていない映像でも被写体を切り抜く用途に利用できます。
例えば、自宅で人物を撮影した動画から部屋の背景を取り除き、その人物の後ろに画像や別の動画を配置するといった編集が可能です。背景削除後も字幕、音楽、トランジションなどの一般的な動画編集を同じ編集環境で続けられる点が便利です。
一方、背景削除の結果は撮影条件によって変わります。人物と壁が似た色だったり、髪が激しく動いたりすると輪郭が不自然になることがあります。そのため、本番前に数秒のテスト動画で仕上がりを確認するのがおすすめです。
Canvaにもワンクリックの動画背景削除機能がある
Canvaには、アップロードした動画を分析して背景を削除する「背景リムーバ」が用意されています。Canva公式では、グリーンスクリーンを使用せずに動画背景を削除できる機能として案内されています。
操作は動画を選択して動画編集の機能から背景リムーバを適用するという分かりやすいものです。切り抜いた人物の後ろに写真やデザイン素材を配置できるため、SNS動画、広告、プレゼンテーションなどの制作にも向いています。
スマートフォン向けCanvaでも動画編集が可能で、公式サイトではモバイル版についてもVideo Background Removerが案内されています。ただし、動画の背景削除はCanva Proの機能として提供されているため、無料利用だけを前提に選ぶ場合は注意が必要です。
Adobe ExpressでもAIによる動画背景削除ができる
Adobe ExpressにもAI Video Background Removerがあり、動画をアップロードして背景を削除し、その後に別の背景を配置して編集できます。Adobe公式では、専門的な動画編集経験がなくても利用できる機能として紹介されています。
Adobe Expressはブラウザベースで利用できるため、PCで「動画を読み込ませて簡単に人物だけを抜きたい」という用途にも候補になります。背景を削除した後、そのままAdobe Express上で画像や動画などを背面に配置できるのも特徴です。
注意したいのは料金体系です。Adobe Express自体には無料プランがありますが、Adobe公式では動画背景削除についてPremiumプランの機能として案内されています。そのため、「完全無料で動画背景削除だけを使いたい」という場合には、契約前に現在の利用条件を確認してください。
CapCut・Canva・Adobe Expressはどう選ぶ?
どのサービスが適しているかは、背景を切り抜いた後に何をしたいかで考えると選びやすくなります。単に切り抜き精度だけでなく、字幕やBGMを入れるのか、デザインを組み合わせるのか、スマートフォンだけで完成させたいのかを考えてみましょう。
| 候補 | 向いている用途 | 特徴 |
|---|---|---|
| CapCut | SNS動画・スマホ編集 | 背景処理後も一般的な動画編集を続けやすい |
| Canva | 広告・SNS・デザイン動画 | 切り抜いた人物と画像・文字・デザイン素材を組み合わせやすい |
| Adobe Express | PC・ブラウザ中心の簡単編集 | AI背景削除から背景交換、デザイン編集まで行える |
料金やAI機能の利用回数、対応端末などはアップデートによって変化します。「無料だから選ぶ」というより、実際に数秒程度の動画を読み込ませ、目的の映像できれいに切り抜けるか確認してから本格的に編集すると失敗が少なくなります。
「背景削除」と「透明動画として書き出す」は別の機能
動画編集では特に注意したいポイントがあります。アプリ内で背景を削除して別の画像と合成できることと、背景が透明な動画ファイルそのものを書き出せることは同じではありません。
例えば、人物の背景をAIで削除し、その後ろに青い背景を配置して普通のMP4として書き出すだけなら、多くの編集ツールで比較的簡単です。しかし、「人物だけの透明な動画を保存し、別の動画編集ソフトへ持っていきたい」という用途では、アルファチャンネルを扱える書き出し形式などが必要になります。
そのため、YouTubeやTikTok用に背景を交換した完成動画が欲しいのか、それとも映像素材として透明背景のまま書き出したいのかを最初に決めておくと、アプリ選びを間違えにくくなります。
AI背景切り抜きをきれいにする撮影のコツ
AIを使えばグリーンバックが必須ではなくなりましたが、撮影方法によって切り抜き精度は大きく変わります。特に重要なのは、被写体と背景を視覚的に区別しやすくすることです。
例えば黒い服を着た人物を暗い部屋で撮影するより、背景と服の明るさや色に差を付けた方が輪郭を認識しやすくなります。また、照明を十分に当てて人物の輪郭を明瞭にし、強いモーションブラーが発生するような激しい動きを避けることも有効です。
髪の毛、指の間、半透明な素材、細いアクセサリーなどはAIにとって難しい部分です。商品紹介など切り抜き品質が重要な映像では、AIだけに頼らず、撮影段階から単純な背景を選ぶことで仕上がりが安定します。
本格的な作品ならグリーンバックも依然として有効
AI背景削除は手軽ですが、どんな動画でも完全に切り抜けるわけではありません。人物が別の人物と重なる、髪が風で激しく動く、背景と服の色が近い、といった映像ではフレームごとに輪郭が揺れることがあります。
数秒から数十秒程度のSNS動画なら多少の誤差が目立たない場合もありますが、長時間の映像や高品質な合成ではグリーンバックによるクロマキーの方が扱いやすいケースもあります。
つまり、AI背景削除はクロマキーを完全に置き換えるものというより、撮影設備を用意せず手軽に動画合成をしたいときの強力な選択肢と考えると分かりやすいでしょう。
まとめ|写真感覚で動画の背景を切り抜けるアプリはある
現在は、写真の背景削除と同じような感覚で動画から人物などを自動的に切り抜けるAI機能があります。スマートフォン中心ならCapCut、デザインとの組み合わせならCanva、ブラウザで手軽に編集したい場合にはAdobe Expressなどが代表的な候補です。
ただし、「背景を削除できる」「別の背景へ交換できる」「透明背景の動画として書き出せる」はそれぞれ別の条件です。また、無料範囲やAI機能の制限もサービスによって異なり、将来的に変更される可能性があります。
まずは同じ素材の短い動画を複数のサービスで試し、切り抜き精度と操作性を比較するのが確実です。人物と背景のコントラストを確保して撮影すれば、グリーンバックなしでも実用的な背景交換動画を作りやすくなります。


コメント