システムエンジニア(SE)を目指している高校生にとって、「プログラミングはどこまでできればいいのか」「未経験でもIT企業に入れるのか」「コミュニケーション能力のほうが重要なのか」は迷いやすいポイントです。
結論からいうと、高校1年生の段階で実務レベルのプログラミング能力を身につけている必要はありません。それよりも、プログラミングの基礎、コンピュータやネットワークの仕組み、論理的に問題を解決する力、他人に説明する力を少しずつ積み上げることが将来につながります。
また、「IT業界は人手不足だから簡単に入れる」「実務経験がないと入れない」という両極端な説明も正確ではありません。新卒採用と中途採用では企業が求める経験が違うためです。ここでは高校生からSEを目指す場合に何をすればよいのか、順番に解説します。
- そもそもシステムエンジニアはプログラムを書くだけの仕事ではない
- 「IT業界は人材不足だからコミュ力だけで入れる」は半分正しく半分間違い
- 「未経験でも入れる」と「実務経験が必要」はどちらも正しい
- 高校生のプログラミングは「小さなものを一人で完成できる」が一つの目標
- プログラミング以外に高1から勉強すると強い分野
- 数学と英語も捨てないほうがいい
- 高1なら「作品を作る」経験が非常におすすめ
- コミュニケーション能力は学校生活でも伸ばせる
- 大学・専門学校・高専・高卒就職はどれを選べばいい?
- 高1から卒業までのおすすめロードマップ
- AI時代でも「自分で考えて確認できる力」は重要
- まとめ:高1なら焦って実務レベルを目指すより基礎と制作経験を積もう
そもそもシステムエンジニアはプログラムを書くだけの仕事ではない
SEという言葉は企業によって仕事内容が異なりますが、一般的なシステム開発では、顧客や利用者が何を必要としているのか整理する要件定義、システムの設計、プログラミング、テスト、導入、運用・保守など幅広い工程があります。
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」でも、Webサービス開発のSEについて、要件定義、データベースや外部システムとの連携を含む基本設計、詳細設計、プログラム作成、クラウドへの構築、運用・保守など多様な仕事が示されています。[参照] 厚生労働省 job tag
例えば「学校の図書館の貸出システムを作る」という仕事なら、いきなりコードを書くのではなく、「生徒は何を検索できるようにするか」「先生と生徒で使える機能を分けるか」「貸出履歴をどう保存するか」といった仕様を考える必要があります。SEには技術だけでなく、相手の要望を整理してシステムへ落とし込む力も必要です。
「IT業界は人材不足だからコミュ力だけで入れる」は半分正しく半分間違い
IT・デジタル人材が不足しているという話には根拠があります。IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2025」では、日本企業でDXを推進する人材について「やや不足している」「大幅に不足している」と回答した割合の合計が8割を超えています。[参照] IPA「DX動向2025」
しかし、人材不足=知識がなくても誰でも採用されるという意味ではありません。企業が不足していると感じているのは、必要な技術や業務知識を持って仕事を進められる人材も含むためです。
一方で、コミュニケーション能力が重要という話も間違いではありません。システム開発はチームで行うことが多く、顧客への確認、仕様の相談、進捗報告、設計内容の説明などが発生します。ただしSEに必要な「コミュ力」は、話が面白いことや社交的であることより、分からないことを質問できる、相手の話を整理できる、自分の考えを正確に伝えられるといった能力です。
「未経験でも入れる」と「実務経験が必要」はどちらも正しい
この2つの情報が矛盾して見える理由は、主に新卒採用と中途採用が混同されているためです。
高校・専門学校・高専・大学などを卒業して初めて就職する新卒採用では、そもそも多くの学生にIT企業での実務経験がありません。そのため、企業によっては入社後の研修を前提として採用します。新卒の段階で「SEとして3年間働いた経験」を要求することは通常想定されません。
一方、社会人が別の会社へ転職する中途採用では「Javaでの開発経験3年以上」「AWSを利用したシステム構築経験」など、特定の実務経験を条件とする求人があります。そのため、インターネットで転職情報を調べると「SEは実務経験が必要」という情報が多く出てくるのです。
つまり、高校1年生が「実務経験がないからSEになれない」と心配する必要はありません。今は実務経験を作る段階ではなく、将来伸びるための基礎を作る時期と考えるほうが適切です。
高校生のプログラミングは「小さなものを一人で完成できる」が一つの目標
プログラミング学習では、言語を何種類覚えたかより、基礎的な仕組みを理解して実際に何か作れることを目標にするとよいでしょう。
最初はPythonなど比較的学習しやすい言語を一つ選び、変数、データ型、ifによる条件分岐、for・whileによる繰り返し、関数、リストや辞書、ファイルの読み書き、エラーの読み方などを学びます。最初からPython、Java、C、C++、JavaScriptを同時に勉強する必要はありません。
例えば、数字当てゲーム、簡単なクイズ、成績を入力して平均点を計算するプログラム、勉強時間を記録するツールなどを作ってみます。「教材のコードを書き写せる」段階から「自分で仕様を考えて完成させる」段階へ進むことが重要です。
Web開発に興味が出てきたら、その後HTML・CSS・JavaScriptを学び、簡単なWebサイトやWebアプリを作ってみてもよいでしょう。さらにデータベースに興味があればSQLへ進む、といった形で興味に応じて広げれば十分です。
プログラミング以外に高1から勉強すると強い分野
SEを目指すなら、コード以外のIT基礎知識も重要です。例えばOS、CPU・メモリ・ストレージ、ネットワーク、IPアドレス、データベース、アルゴリズム、情報セキュリティなどです。
高校生が体系的にITの基礎を学ぶ入口としては、国家試験のITパスポートの出題範囲を教材として利用する方法もあります。IPAではITパスポートを、これから職業人となる人も対象としたITに関する共通的な基礎知識の試験と位置付けています。[参照] IPA「ITパスポート試験」
資格取得そのものを急ぐ必要はありませんが、「ネットワークとは何か」「データベースとは何か」「情報セキュリティとは何か」というIT全体の地図を作るには役立ちます。基礎が身についた後は、より技術者向けの国家試験である基本情報技術者試験を将来の目標にしてもよいでしょう。IPAは試験ごとの知識・技能をシラバスとして公開しています。[参照] IPA「試験要綱・シラバス」
数学と英語も捨てないほうがいい
「SEになるならプログラミングだけ勉強すればいい」と考えがちですが、高校生なら学校の数学と英語も大切にする価値があります。
すべてのSEが高度な数学を毎日使うわけではありません。しかし、数学で身につく論理的に条件を整理する力はプログラミングと相性があります。AI、機械学習、データ分析、画像処理などへ進む場合には数学の重要性がさらに高くなります。
英語も技術者にとって役立ちます。プログラミング言語のキーワード、エラーメッセージ、公式ドキュメント、GitHubの情報など、ITでは英語に触れる機会が多いためです。厚生労働省のjob tagでも、Webサービス開発では最新情報が英語で提供される場合があり、英語の読み書き能力が必要になると説明されています。[参照] 厚生労働省 job tag
高1なら「作品を作る」経験が非常におすすめ
プログラミングの勉強では、参考書を最後まで読むことだけを目標にせず、小さくてもよいので作品を作ってみましょう。完成させる過程で、学校の勉強とは違った経験ができます。
例えば「文化祭の投票集計プログラムを作る」と決めた場合、入力するデータ、集計方法、同票の場合の処理、入力ミスへの対応などを自分で考える必要があります。これは規模こそ小さいものの、実際のシステム開発に通じる考え方です。
さらに慣れてきたらGitやGitHubの基本操作を覚え、自分のコードの変更履歴を管理してみるのもよいでしょう。ただし、個人情報、学校内部のデータ、パスワードやAPIキーなどを公開リポジトリへ載せないよう、情報セキュリティも同時に学ぶ必要があります。
コミュニケーション能力は学校生活でも伸ばせる
SEに必要なコミュニケーション能力は、アルバイトや社会人経験がなければ身につかないものではありません。高校生活でも練習できます。
グループ課題で役割を相談する、分からない問題を先生へ具体的に質問する、自分が理解した内容を友人へ説明する、文化祭などでスケジュールを調整するといった経験も、チーム開発で必要になる力につながります。
例えば「プログラムが動きません」と伝えるだけではなく、「この処理を実行すると、この行でこのエラーが出ます。入力値を変えても同じでした」と整理して説明する癖をつけると、技術者として非常に役立ちます。
大学・専門学校・高専・高卒就職はどれを選べばいい?
SEになるために必須の進路が一つだけ存在するわけではありません。大学の情報系学部、専門学校、高専、高校卒業後の就職など複数のルートがあります。
大学では情報科学や数学などを体系的に学びやすく、幅広い企業の新卒採用へ応募しやすいメリットがあります。専門学校ではプログラミングや資格など職業に直結した内容を学びやすく、高専では工学・情報分野を実践的に深く学べます。高卒でIT企業へ就職し、働きながら技術を身につけるルートもあります。
高校1年生なら、今すぐ一つに決める必要はありません。興味のある大学・専門学校・企業の入試科目や採用情報を実際に調べ、「自分がやりたい仕事へ進みやすいルートはどれか」を高校2年生頃までに具体化していくとよいでしょう。
高1から卒業までのおすすめロードマップ
何から始めればよいか分からない場合は、次のような順番を一つの目安にできます。
| 時期 | 取り組むこと | 目標 |
|---|---|---|
| 高1前半 | Pythonなど1言語の基礎 | 条件分岐・繰り返し・関数を理解する |
| 高1後半 | 小さなプログラム制作 | 自力で1つ完成させる |
| 高1~高2 | ITパスポート相当の基礎知識 | IT全体の仕組みを知る |
| 高2 | Web・データベース・Gitなど興味のある分野 | 少し本格的な作品を作る |
| 高2~高3 | 基本情報技術者試験の範囲など | アルゴリズムやIT知識を深める |
| 高3 | 進学・就職準備 | 作品や学習経験を説明できるようにする |
これは絶対的なスケジュールではありません。資格を先に取ってもよいですし、ゲーム制作やWeb制作が面白ければ、そこからプログラミングを深く学んでも構いません。
AI時代でも「自分で考えて確認できる力」は重要
現在は生成AIにコードを書かせることもできます。そのため、「これからプログラミングを勉強して意味があるのか」と感じる高校生もいるかもしれません。
しかしAIが生成したコードが正しいのか、セキュリティ上の問題がないのか、要求された仕様を満たしているのかを判断するには基礎知識が必要です。AIを使えることと、システムを理解できることは同じではありません。
これからの学習では、AIを完全に避ける必要も、AIへ全部任せる必要もありません。「まず自分で考える→分からない部分を調べる→AIも補助として使う→出力された内容を自分で検証する」という使い方を身につけると、将来にもつながりやすいでしょう。
まとめ:高1なら焦って実務レベルを目指すより基礎と制作経験を積もう
システムエンジニアはプログラミングだけをする仕事ではなく、要件を整理し、設計し、チームで開発し、テストや運用まで関わる幅広い仕事です。そのため、プログラミング能力とコミュニケーション能力のどちらか一方だけあればよいわけではありません。
また、「IT人材が不足している」「未経験でも就職できる」「実務経験が必要」という情報は必ずしも矛盾しません。特に新卒採用では実務経験のない学生も対象になる一方、中途採用では実務経験を求める求人が多くあります。
高校1年生なら、まずプログラミング言語を1つ選んで基礎を学び、小さな作品を自力で完成させることがおすすめです。同時にコンピュータ、ネットワーク、データベース、セキュリティなどの基礎を学び、数学・英語・人に説明する力も大切にすると、将来選べる分野が広がります。
高校卒業まで3年近く継続して学べること自体が大きな強みです。最初から高度なアプリを作ろうとせず、「基礎を覚える→小さく作る→失敗する→調べて直す→少し難しいものを作る」という経験を繰り返すことが、SEを目指すうえで実践的な準備になります。


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