化学物質のブレンド製品を扱うメーカーでは、原料数の増加や法改正による対象物質の拡大により、SDS作成や法令該当性チェックにかかる時間が大きな負担になっています。特に混合物の場合、原料中の副成分まで考慮した最終濃度計算や、安衛法・PRTR法など複数法令への該当確認が必要になるため、単純な入力作業だけでは対応が難しくなっています。
近年では、ExcelのPower QueryやVBA、Gmiccsの出力データを活用してSDS作成業務を効率化する取り組みが増えています。この記事では、混合物メーカーにおけるSDS作成自動化の考え方、Excelツールで対応できる範囲、導入時に注意すべきポイントについて解説します。
混合物のSDS作成で特に工数が増えるポイント
混合物のSDS作成では、単純に配合原料を記載するだけでは不十分です。原料そのものに含まれる副成分や不純物まで考慮し、製品全体に対する含有量を算出する必要があります。
例えば、原料Aを50%配合する製品で、原料Aの中に物質Bが20%含まれている場合、製品中の物質B濃度は10%になります。このような計算を原料数十種類分について手作業で行うと、入力ミスや計算漏れのリスクが高まります。
さらに、法令改正によって対象物質や管理基準が変化するため、過去に作成したSDSについても定期的な確認や改訂作業が必要になります。
ExcelとPower Queryを活用したSDS作成効率化の可能性
Excelは、SDS作成業務の効率化ツールとして非常に相性が良いソフトです。特にPower Queryを利用すると、原料マスターや法令リストなど複数データを自動的に取り込み、加工する仕組みを構築できます。
例えば、以下のような処理はExcelベースでも十分自動化できます。
- 原料コードから成分情報を呼び出す
- 副成分を展開して製品中濃度を計算する
- 法令リストと照合して該当可否を判定する
- SDS第3項や第15項用のデータを作成する
- 決まったフォーマットへ自動転記する
特に副成分展開については、原料マスター側に「主成分」「副成分」「含有率」を登録しておくことで、処方表から製品全体の組成を自動計算する仕組みを作ることができます。
Gmiccsデータを活用したSDS作成フローの改善
Gmiccsは、NITEが提供する化学物質のGHS分類やSDS作成を支援するシステムで、多くの化学品メーカーで利用されています。
ただし、Gmiccsから出力したデータをそのまま自社SDSフォーマットとして利用できない場合が多く、企業ごとの帳票形式へ加工する作業が発生します。
この部分はExcel VBAやPower Queryによる自動化との相性が良く、例えば以下のような処理が可能です。
- Gmiccs出力ファイルを読み込む
- 必要項目だけ抽出する
- 自社SDSテンプレートへ配置する
- 文字サイズや表形式を自動調整する
これにより、毎回同じ形式のコピー&ペースト作業を減らし、担当者による作業時間の差も小さくできます。
Excelツール化する場合に注意すべきポイント
SDS作成支援ツールをExcelで構築する場合、最も重要なのは「計算できること」だけではなく「根拠を追跡できること」です。
例えば、法令判定結果が表示されても、その判定に使用した法令リストの更新日や元データが分からなければ、監査や問い合わせ時に説明できません。
そのため、以下のような管理機能を持たせることが重要です。
| 項目 | 必要な機能 |
|---|---|
| 法令データ | 取得日やバージョン管理 |
| 成分情報 | 原料マスター更新履歴 |
| 計算結果 | 元データへのリンク確認 |
| SDS出力 | 作成日・改訂履歴管理 |
特に法令リストを利用者自身が最新版へ更新する方式の場合、更新方法を明確にしておかないと、古いデータによる判定ミスにつながる可能性があります。
市販ツールや外部サービスを導入する価値があるケース
Excelベースのツールは柔軟性が高い一方で、自社で管理する必要があります。そのため、導入判断では費用だけではなく、維持管理の負担も考慮する必要があります。
例えば、以下のような企業では外部ツール導入のメリットが大きくなります。
- SDS作成件数が毎月大量に発生する
- 担当者が複数いて品質を統一したい
- 法改正対応に時間を取られている
- 属人的なExcel管理から脱却したい
一方で、年間作成数が少なく、法令データ更新やExcel管理ができる担当者がいる場合は、簡易的なExcelツールでも十分な効果を得られる場合があります。
SDS自動化で最終的に重要になるのはデータ管理
SDS作成業務の効率化では、単に帳票を自動作成するだけではなく、元となるデータを正しく管理する仕組みが重要です。
原料マスター、法令情報、GHS分類結果、過去SDSの履歴を整理しておけば、Excelでも高度な自動化が可能になります。
逆に、元データが整理されていない状態で自動化だけを進めると、誤った情報を高速で出力してしまう危険があります。
まとめ|混合物SDS作成はExcel自動化でも大きな効果が期待できる
混合物メーカーのSDS作成業務では、副成分計算、法令判定、Gmiccsデータ加工など多くの繰り返し作業が発生します。これらはPower QueryやVBAを活用することで、大幅な効率化が可能です。
ただし、実務で使える仕組みにするためには、単なる自動計算ではなく、法令データの更新管理や判定根拠の保存、改訂履歴管理まで考慮することが重要です。
小規模な効率化であればExcelツールでも十分対応できますが、SDS作成量が多い企業では専用システムとの比較も有効です。自社の作業量や管理体制に合わせて、最適な自動化レベルを選択することが成功のポイントになります。


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