現在ではEthernetやUSB通信が一般的になっていますが、かつてのコンピュータ通信や産業機器ではシリアル通信が重要な役割を担っていました。RS-232Cなどを利用した通信では、限られた通信速度や信頼性の中で効率よくデータを送受信するため、さまざまな転送プロトコルが利用されていました。
シリアル通信時代に使われたプロトコルには、それぞれ用途や目的に応じた特徴があります。この記事では、代表的なシリアル通信プロトコルや、なぜその方式が選ばれていたのか、実際の利用例を交えながら解説します。
シリアル通信でプロトコルが必要だった理由
シリアル通信では、データを1ビットずつ順番に送信します。そのため、単純に文字や数字を送るだけでは、送信側と受信側でデータの区切りやエラー発生を判断できません。
例えば、機器Aから「12345」というデータを送った場合、受信側がどこからどこまでが1つのデータなのか判断できなければ正しく処理できません。そのため、データの開始位置、終了位置、エラー確認方法などを決めた通信ルールが必要でした。
この通信ルールが転送プロトコルであり、接続する機器や目的によってさまざまな方式が利用されました。
RS-232C時代に広く使われた代表的な通信プロトコル
1. XMODEM
XMODEMは、パソコン通信やファイル転送で広く利用された代表的なプロトコルです。1970年代後半に開発され、低速なシリアル通信環境でも安定してファイルを送信できるよう設計されていました。
特徴は、128バイト単位のブロックに分割してデータを送信し、チェックサムによってエラー検出を行う点です。通信エラーが発生した場合は、そのブロックだけを再送する仕組みになっていました。
当時の電話回線を利用した通信ではノイズによるデータ破損が起こりやすかったため、シンプルで実装しやすいXMODEMは多くの端末で採用されました。
2. YMODEM
YMODEMはXMODEMを改良したプロトコルで、より高速なファイル転送を目的として開発されました。
XMODEMでは基本的に1つずつファイルを送信していましたが、YMODEMでは複数ファイルの送信やファイル情報の送信に対応しています。また、より大きなブロックサイズを利用できるため、通信効率が向上しました。
パソコン通信やソフトウェア配布など、大きなファイルを扱う場面で利用されることが多いプロトコルでした。
3. ZMODEM
ZMODEMは、XMODEMやYMODEMをさらに発展させた高速ファイル転送プロトコルです。1980年代後半から広く利用されました。
大きな特徴は、途中で通信が切断されても再開できるリジューム機能を持っていたことです。当時の電話回線では長時間通信中に切断されることも珍しくなかったため、この機能は非常に便利でした。
また、データ圧縮やストリーム転送にも対応しており、限られた通信速度を有効活用できる点が評価されました。
産業機器や組み込み分野で使われた通信方式
パソコン通信だけではなく、工場設備や計測機器などでもシリアル通信は多く利用されました。この分野では、ファイル転送よりも機器間の制御やデータ交換が重要でした。
代表的なものとして、独自プロトコルやASCIIベースの通信方式、MODBUSなどがあります。
MODBUS
MODBUSは産業用機器で現在でも利用されている通信プロトコルです。1979年に開発され、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)などの制御機器との通信で広まりました。
シンプルな構造で実装しやすく、メーカーが異なる機器同士でも通信しやすい点が大きなメリットでした。RS-232Cだけでなく、RS-485を利用したネットワーク通信でも広く使われています。
例えば、工場内の温度センサーからデータを取得したり、制御装置へ指示を送ったりする用途で利用されています。
通信プロトコルを選ぶ基準は何だったのか
シリアル通信時代のプロトコル選択では、単純な速度だけではなく、目的に合った信頼性や実装のしやすさが重視されていました。
例えば、パソコン間でファイルを送る場合はXMODEMやZMODEMのような再送制御を持つプロトコルが適していました。一方、工場設備では高速なファイル転送よりも、確実な制御命令の送受信が重要でした。
また、当時のCPU性能やメモリ容量は現在ほど余裕がなかったため、複雑すぎないシンプルなプロトコルが好まれる傾向もありました。
シリアル通信プロトコルが現在にも残っている理由
USBやネットワーク通信が普及した現在でも、シリアル通信は完全になくなったわけではありません。産業機器、医療機器、組み込みシステムなどでは、安定性や長期間利用できる点から現在も利用されています。
特にMODBUSなどの産業用プロトコルは、多くの設備で採用されており、新しいシステムでも利用されています。
また、マイコン開発やIoT機器ではUART通信が基本的なデバッグ手段として使われることも多く、シリアル通信の考え方は現在の技術にも受け継がれています。
まとめ:シリアル通信時代は用途に応じたプロトコルが選ばれていた
シリアル通信時代には、XMODEM、YMODEM、ZMODEM、MODBUSなど、目的に応じたさまざまな転送プロトコルが利用されていました。
ファイル転送ではエラー訂正や再送機能を持つプロトコルが選ばれ、産業分野ではシンプルで信頼性の高い通信方式が重視されました。
当時の限られた通信環境で効率よく情報をやり取りするために生まれたこれらの技術は、現在のネットワーク通信や組み込み技術にも通じる重要な基礎となっています。

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