PLC・SCADA・IPコンバータ・テレメータを学べる産業ネットワーク専門書は?制御ネットワークのおすすめ書籍と学習順序

ネットワーク技術

工場、プラント、電力、水道、交通設備などで使われる産業ネットワークを学ぼうとすると、PLC、SCADA、RTU、テレメータ、産業用Ethernet、Modbus、DNP3、OPC UA、各種通信コンバータなど、多数の用語が登場します。一般的なTCP/IPのネットワーク本だけでは、これらが実際の制御システムの中でどのようにつながっているのか分かりにくいことがあります。

結論からいうと、PLCやSCADAを含めて産業ネットワーク全体を扱う専門書はあります。ただし、PLC・SCADA・IPコンバータ・テレメータの4項目を日本語で同じ深さまで網羅した一冊を探すより、「産業制御システム全体を扱う本」と「PLC・計装・テレメータなど個別分野の本」を組み合わせる方が実務的です。

特に有力なのが、Eric D. Knappによる『Industrial Network Security: Securing Critical Infrastructure Networks for Smart Grid, SCADA, and Other Industrial Control Systems』です。英語書籍ですが、産業ネットワーク、ICS、SCADA、PLC、RTU、HMI、産業用通信プロトコルなどを体系的に理解したい場合に候補になります。現在確認できる第3版は2024年刊行です。Elsevier公式書籍情報[参照]

PLC・SCADA・テレメータは「産業制御システム」という枠組みで探す

書籍を探すときに重要なのが検索キーワードです。「産業ネットワーク」だけで検索すると、PROFINETやEtherNet/IPなど通信技術中心の資料が見つかることがあります。一方、PLCやSCADAまで含めたシステム全体を学びたい場合は、ICS(Industrial Control System:産業制御システム)OT(Operational Technology)というキーワードも利用すると探しやすくなります。

典型的な産業制御システムでは、現場のセンサーから取得した情報をPLCやRTUなどが処理し、そのデータを産業ネットワーク経由でSCADAやHMIへ送り、オペレーターが設備状態を監視します。遠隔設備であれば通信回線を介して監視センターへデータを送る仕組みが使われることもあります。

つまりPLC、SCADA、IPコンバータ、テレメータは完全に独立した技術ではありません。「現場機器→制御装置→通信→監視システム」という一連の構成要素として理解すると、それぞれの役割が整理しやすくなります。

おすすめは『Industrial Network Security』第3版

産業ネットワークを広い視点から理解したい場合の候補が、Eric D. Knapp著『Industrial Network Security: Securing Critical Infrastructure Networks for Smart Grid, SCADA, and Other Industrial Control Systems, Third Edition』です。Elsevierから2024年に刊行されており、産業制御システム特有のネットワーク、プロトコル、アプリケーションと、それらを保護するためのセキュリティを扱っています。Elsevier公式情報[参照]

タイトルには「Security」とありますが、セキュリティだけを説明する本ではありません。産業ネットワークを守るためには、そもそも制御システムがどのような機器とネットワークで構成され、どう通信しているのかを理解する必要があるため、ICSやSCADAの構造そのものについても扱われています。

初版・第2版の公開されている目次では、「How Industrial Networks Operate」の中にRTUs、PLCs、HMIs、Supervisory Workstationsなどの制御システム資産が明記されています。また、Modbus、DNP3、OPC、EtherNet/IP、PROFIBUS、EtherCATなどの産業用プロトコルについても取り上げられています。Elsevierによる初版の詳細・目次[参照]

『Industrial Network Security』で学べる内容

産業ネットワークを初めて体系的に見る場合、この本の利点は「PLCだけ」「SCADAだけ」ではなく、ネットワーク全体の中で機器を見ることができる点です。

学びたい項目 関連して学べる内容
PLC ICSを構成する制御機器としてのPLCとネットワーク上の位置付け
SCADA 監視制御システム、SCADAネットワーク、監視系の構成
RTU 遠隔設備で使用されるRemote Terminal Unitの位置付け
産業ネットワーク Ethernet・TCP/IPと制御系ネットワークの違い
産業用プロトコル Modbus、DNP3、OPC、EtherNet/IPなど
セキュリティ ICS特有のリスク、ネットワーク分離、防御、脆弱性など

特に、ITネットワークの知識はあるものの「PLCやSCADAがネットワークのどこに存在するのか分からない」という人には、ITとOTをつなぐ資料として役立ちます。

テレメータを理解するならRTU・遠隔監視も一緒に調べる

「テレメータ」という用語は分野やメーカーによって指している範囲が異なることがあります。そのため、専門書を探す際にはテレメータだけでなく、テレメトリ、遠隔監視、RTU、SCADA、遠方監視制御といったキーワードも併用すると関連資料を見つけやすくなります。

例えば上下水道設備を考えると、離れた場所にポンプ場や水槽があり、水位、流量、圧力、ポンプ運転状態などを中央監視室へ送りたい場合があります。このような遠隔設備の情報収集・伝送はSCADAやRTU、テレメータと密接に関係します。

したがって、「PLC→SCADA」という工場内の構成だけを覚えるのではなく、遠隔設備→RTU・テレメータ→通信回線→SCADAという構成も理解しておくと、電力・水道・ガス・河川・交通など広域設備のネットワークが理解しやすくなります。

IPコンバータは書籍によって呼び方が異なる

「IPコンバータ」という言葉については少し注意が必要です。これはPLCやSCADAほど一意に分類できる名称ではなく、製品によって変換対象が異なります。

例えば現場では、RS-232CやRS-485などのシリアル通信をEthernetへ接続するシリアル・Ethernetコンバータ、シリアルデバイスサーバーが使われます。また、Modbus RTUとModbus TCPを相互接続するゲートウェイ、異なる産業用プロトコルを変換するプロトコルコンバータなどもあります。

そのため専門書を探すときは「IPコンバータ」だけでなく、シリアルEthernet変換、RS-485 Ethernet、デバイスサーバー、産業用ゲートウェイ、プロトコルコンバータ、Modbus RTU/TCP Gatewayなども検索すると目的に近い情報へ到達しやすくなります。

PLC・SCADA・IPコンバータ・テレメータの関係を具体例で理解する

例えば、離れた場所にあるポンプ設備を中央監視室から監視するシステムを考えてみます。現場には水位センサーや流量計があり、その信号をPLCやRTUが取得します。

PLCがRS-485のModbus RTUで通信する機器しか持っていない一方、上位ネットワークがEthernet/IPネットワークで構築されている場合には、シリアル・Ethernet変換器やプロトコルゲートウェイが間に入ることがあります。

そして通信回線を通して監視センター側へ情報を送り、SCADAが水位、流量、ポンプの運転・停止、警報などを画面へ表示します。このような一連の仕組みをイメージすると、それぞれの用語を暗記するより理解しやすくなります。

産業ネットワークで頻出するModbusも押さえておきたい

PLCやSCADAを勉強するなら、通信プロトコルについても基礎を押さえておくと理解が大きく進みます。代表例の一つがModbusです。

Modbus RTUはシリアル通信で広く使われてきた方式で、Modbus TCPはEthernet/TCP/IP環境で利用されます。そのため、古いシリアル機器と新しいEthernetネットワークを接続するときには、ゲートウェイや変換器が登場することがあります。

『Industrial Network Security』でもModbusやDNP3などの産業用通信プロトコルが扱われています。単にEthernetの配線方法を学ぶのではなく、「PLCやRTUが実際にどんなデータをどのプロトコルでやり取りするのか」という視点を持つことが重要です。ScienceDirect書籍情報[参照]

SCADAを学ぶならHMIとの違いも理解する

SCADAを勉強しているとHMIという言葉も頻繁に登場します。HMIはHuman Machine Interfaceの略で、設備状態を画面に表示したり、オペレーターが操作したりするためのインターフェースを指します。

SCADAはより広い監視制御システムとして、複数設備からデータを集め、監視、警報、履歴管理などを行います。実際のシステムではSCADAの操作画面がHMIとして機能するため、両者の言葉が近い文脈で登場します。

専門書を探す際も「SCADA」だけに限定せず、SCADA HMI PLC RTU industrial control systemsなど複数のキーワードを組み合わせると、システム全体を説明した本を見つけやすくなります。

産業ネットワークのセキュリティを学ぶ意味

PLCやSCADAについて調べると、近年の専門書ではサイバーセキュリティの説明がかなり多くなっています。「ネットワーク構成を知りたいだけなのに、なぜセキュリティ本なのか」と感じるかもしれませんが、現在の産業ネットワークでは両者を切り離しにくくなっています。

以前は独立した専用ネットワークとして構築されることが多かった制御システムでも、EthernetやTCP/IP、Windowsベースの監視システムなど汎用IT技術が利用されるようになりました。その結果、ITネットワークとの接続方法、ネットワーク分離、ファイアウォール、リモートアクセスなどの設計も重要になっています。

一方で、一般的なITシステムでは情報の機密性が重要になる場面が多いのに対し、工場やインフラでは設備を安全かつ継続的に動かす「可用性」が極めて重要です。産業ネットワークの専門書を選ぶなら、こうしたITとOTの違いまで説明しているものが役立ちます。

日本語だけで一冊にまとめようとしない方が学びやすい

PLC、SCADA、テレメータ、産業用通信を一冊ですべて詳しく解説する日本語書籍を探すと、選択肢がかなり限定されます。これはそれぞれが非常に大きな専門分野だからです。

PLCだけでもラダー、I/O、シーケンス制御、アナログ制御、ネットワーク通信などがあります。SCADAには監視画面、データ収集、アラーム、ヒストリアン、冗長化などがあり、テレメータには通信回線や遠隔設備特有の設計があります。

そのため、「全体像を理解する産業ネットワーク・ICS本」+「PLC本」+「計装・SCADA・遠隔監視の資料」+「使用するメーカーの技術マニュアル」という組み合わせが実務では効率的です。

メーカーの技術資料も専門書と併用すると理解が早い

産業ネットワークでは、書籍だけでなくメーカーのマニュアルやアプリケーションノートが非常に重要です。PLC、SCADA、通信ユニット、ゲートウェイなどは製品によって設定方法が大きく異なるからです。

例えばModbus TCPという共通プロトコルを使用していても、IPアドレス設定、レジスタの割り当て、通信周期、タイムアウト、エラー時の処理などは機器ごとに確認する必要があります。

書籍で「なぜこの構成になるのか」を理解し、メーカー資料で「この機種では具体的にどう設定するのか」を確認する、という使い分けがおすすめです。

初心者ならこの順番で学ぶと理解しやすい

産業ネットワークをゼロから勉強する場合、いきなりSCADAのセキュリティや複雑な産業プロトコルから入ると用語が多すぎて混乱しやすくなります。

  1. Ethernet、IPアドレス、TCP/UDP、スイッチ、ルーターなどTCP/IPの基礎
  2. センサー、アクチュエータ、I/O、PLCなど制御の基礎
  3. HMI・SCADA・RTU・テレメータの役割
  4. RS-232C・RS-485などシリアル通信
  5. Modbus RTU・Modbus TCPなど産業用プロトコル
  6. シリアルEthernet変換器・プロトコルゲートウェイ
  7. PROFINET、EtherNet/IP、EtherCATなど産業用Ethernet
  8. ネットワーク冗長化・時刻同期・遠隔監視
  9. OTネットワーク分離・ファイアウォール・IEC 62443などセキュリティ

この順番なら、PLC、SCADA、IPコンバータ、テレメータがバラバラの単語ではなく、一つの制御ネットワークを構成する技術としてつながってきます。

書籍を選ぶときは目次で「PLC・RTU・SCADA・Modbus」を確認する

タイトルに「産業ネットワーク」と書かれているだけでは、自分が求めている内容が掲載されているとは限りません。購入前に出版社や書店で目次を確認するのがおすすめです。

特にPLC、RTU、SCADA、HMI、Modbus、DNP3、OPC、Industrial Ethernet、Fieldbusといった単語が目次や索引にあるか確認すると、目的に合う本か判断しやすくなります。

逆にLANケーブル、Ethernetスイッチ、TCP/IPなどだけが中心なら、一般的なネットワーク技術の本に近く、PLCやSCADAのシステム構成までは詳しく説明されていない可能性があります。

まとめ|PLC・SCADA・IPコンバータ・テレメータはICS全体を扱う本から入る

PLC、SCADA、IPコンバータ、テレメータなどを体系的に学びたい場合は、「産業ネットワーク」だけでなくICS、Industrial Control Systems、OT、SCADA、RTU、Industrial Networksというキーワードで専門書を探すのがポイントです。

英語でも問題なければ、Eric D. Knapp著『Industrial Network Security: Securing Critical Infrastructure Networks for Smart Grid, SCADA, and Other Industrial Control Systems』は有力な候補です。2024年刊行の第3版があり、出版社のElsevierもSCADAを含むICSのプロトコルやアプリケーション、産業インフラのネットワークについて扱う専門書として案内しています。第3版の公式情報[参照]

ただし、IPコンバータやテレメータについて特定製品の設定方法まで知りたい場合、一冊ですべて解決するのは難しいでしょう。産業ネットワーク・ICSの本で全体像を理解したうえで、PLC、SCADA、遠隔監視、通信変換器の専門資料やメーカーのマニュアルを併用する方法が効率的です。

「PLCが制御する」「RTUやテレメータが遠隔データを収集・伝送する」「ゲートウェイやコンバータが異なる通信方式をつなぐ」「SCADAが上位で監視する」という全体像を最初につかむと、その後に個々の専門書を読んだときの理解が大きく進みます。

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