ESG(環境・社会・ガバナンス)に関する実証研究や企業分析では、企業ごとのESG指標を長期間追跡できるパネルデータが重要になります。しかし、ESGデータは財務データと比べて取得元が分散しており、目的に合ったデータベースを探すのに苦労することがあります。この記事では、ESG指標を取得できる代表的なデータベースや、パネルデータとして利用する際のポイントについて解説します。
ESGデータをパネルデータで取得する際の基本ポイント
ESGのパネルデータとは、複数企業について複数期間のESG情報を追跡できる形式のデータです。例えば、同じ企業の2015年から2025年までのCO2排出量、ESGスコア、女性役員比率などを年度ごとに比較できます。
企業のESG活動と業績の関係を分析する場合、単年度のデータだけでは企業固有の特徴や時間的な変化を把握できません。そのため、企業IDや年度情報が整理されたデータベースを利用することが一般的です。
研究目的の場合は、ESGスコアだけでなく、財務データ、株価データ、産業分類などと結合できるかどうかも重要な確認ポイントになります。
代表的なESGデータベース1:MSCI ESGデータ
MSCI ESG Researchは、世界的に利用されているESG評価データの一つです。企業ごとのESGリスク評価や環境・社会・ガバナンスに関するスコアを提供しています。
多数の国や地域の上場企業を対象としており、国際比較を行う研究や投資分析で利用されています。年度ごとのESG評価データを取得できるため、パネル分析にも適しています。
ただし、MSCIのデータは一般的に有料提供となっており、大学や研究機関では契約済みのデータベース経由で利用できる場合があります。
代表的なESGデータベース2:Refinitiv ESGデータ
Refinitiv(旧Thomson Reuters)のESGデータは、企業のESGスコアや個別指標を収録した代表的なデータソースです。
環境分野では温室効果ガス排出量、水使用量、エネルギー利用など、社会分野では従業員構成や安全性、ガバナンス分野では取締役会構成など、多様な項目を取得できます。
財務データと組み合わせた企業パネル分析で利用されることも多く、ESG投資や経営研究で広く使われています。
代表的なESGデータベース3:Bloomberg ESGデータ
Bloombergでは、上場企業のESG開示情報やESGスコアを提供しています。Bloomberg Terminalを利用できる環境であれば、企業財務情報と合わせて分析できます。
特に投資分析では、株価、財務指標、ESG指標を同じ環境で扱える点がメリットです。
例えば、ESGスコアが高い企業群と低い企業群で株価パフォーマンスや収益性を比較するといった分析に利用できます。
無料または研究用途で利用しやすいESGデータソース
有料データベース以外にも、研究用途で利用できるESG関連データがあります。
RefinitivやMSCIなどの商用データ以外では、企業が公開している統合報告書、サステナビリティレポート、CDP(Carbon Disclosure Project)の公開情報などを利用できます。
また、研究分野ではWRDS(Wharton Research Data Services)や各大学の契約データベースを通じてESGデータへアクセスできる場合があります。
無料データの場合は取得や加工の手間が増えますが、特定の指標だけを分析する場合には十分利用可能です。
ESGパネルデータ分析で組み合わせると便利なデータ
ESG研究では、ESG指標だけでなく企業属性や財務情報と組み合わせることで、より詳細な分析が可能になります。
例えば、企業のROA、ROE、売上高、総資産、負債比率などの財務データを加えることで、ESG活動が企業パフォーマンスに与える影響を検証できます。
具体的には、「ESGスコアが高い企業ほど収益性が高いのか」「環境対応への投資は長期的な企業価値向上につながるのか」といった研究テーマでパネル回帰分析を行うことができます。
ESGデータ取得時に注意すべきポイント
ESGデータはデータベースによって評価方法やスコアの定義が異なる点に注意が必要です。同じ企業でも、提供元によってESG評価が大きく異なる場合があります。
分析前には、ESGスコアがどのような基準で算出されているか、対象企業数や対象期間が研究目的に合っているかを確認することが重要です。
また、企業名ではなく証券コードや国際的な企業IDで管理されている場合があるため、財務データなどと結合する際にはIDの対応付け作業も必要になります。
まとめ|ESGパネルデータなら目的に合ったデータベース選びが重要
ESG指標をパネルデータとして取得する場合、MSCI、Refinitiv、Bloombergなどの商用データベースが代表的な選択肢になります。
研究目的や予算によって利用できるデータは異なりますが、企業別・年度別に整理されたESG情報を取得できれば、企業価値や財務パフォーマンスとの関係を分析できます。
重要なのは、単純にESGスコアを取得するだけではなく、分析目的に合った指標、対象企業、期間、財務データとの接続可能性を確認してデータベースを選ぶことです。


コメント