ボコーダーは、音声信号を変調し、機械的に音を生成する装置として音楽の世界で多くの使用例があります。特に1960年代、IBM 7094によって初めて歌われた音声の背後には、ボコーダーの存在が大きく関わっています。本記事では、1960年代初頭のボコーダーの技術とその歴史的背景を掘り下げ、実物写真も交えながら解説します。
ボコーダーの基本的な仕組み
ボコーダーは、音声信号を複数の周波数帯域に分解し、それぞれの帯域に基づいて音を変調する装置です。この変調により、機械的な音声やロボットのような不自然な音声が生み出されます。元々は、軍事通信の暗号化目的で使用されていた技術ですが、音楽にも応用され、特に1960年代から1970年代にかけて、音楽制作で広く使われるようになりました。
1960年代のIBM 7094とボコーダー
IBM 7094は、1960年代に登場した初期のコンピュータで、音楽の演奏に使用されたことでも有名です。このコンピュータが世界で初めて歌った曲が「Daisy Bell」であり、その背後にはボコーダーが使われていました。この歴史的な出来事は、コンピュータ音楽の先駆けとして重要な位置を占めています。IBM 7094が歌う「Daisy Bell」は、ボコーダーを使った音声合成の先駆けとなり、その後のコンピュータ音楽の発展に大きな影響を与えました。
1960年代のボコーダー実物写真
1960年代初期のボコーダーは、今日見られるものとは少し異なります。当時のボコーダーは、大型で重い装置が多く、テープデッキや他の機械的な部品と接続して使用されていました。代表的なものとしては、ムーグ(Moog)社が製造した「Moog Vocoder」がありますが、当時のボコーダーは今のようにコンパクトではなく、スタジオの中でもかなりのスペースを占めていました。
ボコーダーの音楽への影響と実際の使用例
ボコーダーが音楽に与えた影響は大きく、特に1970年代には様々な音楽ジャンルで使用されました。例えば、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)や、ロックバンドのピンク・フロイドなどがボコーダーを駆使した曲を発表しました。また、ボコーダーを使用した音楽は、ロボット的な声や、エレクトロニックなサウンドを特徴とし、未来的な印象を与えました。
ボコーダーの進化と現代の使用
現代のボコーダーは、デジタル技術の進化により、さらにコンパクトになり、音質も向上しました。今では、ソフトウェアとしても提供され、DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)上で簡単に使用することができます。また、サウンドデザインやシンセサイザーのエフェクトとしても欠かせない存在となっています。
まとめ
1960年代のボコーダー技術は、音楽やコンピュータ音楽の発展において重要な役割を果たしました。IBM 7094による「Daisy Bell」の歌唱は、コンピュータによる音楽生成の始まりを象徴する出来事であり、当時のボコーダーの影響を感じることができます。現代のボコーダーは、音楽制作に欠かせないツールとして、進化を続けています。


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