プログラム設計において、関心の分離は非常に重要な概念です。本記事では、Pythonでのヒットポイント回復処理を担当するクラスの設計例を元に、関心の分離を意識したクラス設計の重要性と改善点について解説します。
関心の分離とは?
関心の分離(Separation of Concerns, SoC)とは、ソフトウェア設計において、異なる機能や責任を明確に分けて設計する手法です。このアプローチを採ることで、コードの可読性や保守性が向上し、システム全体の理解が容易になります。
ヒットポイント回復クラス(Python版)の設計例
以下のコード例は、RPGゲームの回復処理を担当する「HitPointRecovery」クラスの実装です。このクラスは、回復魔法の詠唱者の魔力とメンバー間の好感度に基づいて回復量を計算します。
class HitPointRecovery:
MAGIC_POWER_COEFFICIENT = 0.8 # 魔力係数(仮)
def __init__(self, chanter, target_member_id, positive_feelings):
"""
:param chanter: 回復魔法の詠唱者 (Memberオブジェクト)
:param target_member_id: 回復魔法を受けるメンバーのID (int)
:param positive_feelings: メンバー同士の好感度 (PositiveFeelingsオブジェクト)
"""
basic_recover_amount = int(chanter.magic_power * self.MAGIC_POWER_COEFFICIENT) \
+ positive_feelings.value(chanter.id, target_member_id)
関心の分離が実現されている良い例
このクラスでは、回復処理に関する責務が「HitPointRecovery」クラスに集中しており、魔力計算と好感度の影響を明確に分離しています。また、好感度の計算を担当する「PositiveFeelings」クラスが別に存在し、回復処理とは関心が分かれています。
このように、各クラスが自分の責任を明確に持っているため、クラス間の依存が減り、コードの再利用性と保守性が向上します。
関心が混在した場合の問題点
関心が混在している場合、クラスやメソッドが複数の責任を持つことになり、コードの可読性や理解が難しくなります。例えば、「BattleView」クラスが画面表示だけでなく好感度の操作も担当している場合、表示ロジックとビジネスロジックが混在し、保守が困難になります。
悪い例:関心が混ざったクラス
例えば、「OrderService」クラスが価格計算と履歴取得をまとめて行っている場合、1つのクラスに過剰な責任が集中し、変更が難しくなる可能性があります。このような設計は、将来的な機能追加や修正時に複雑な問題を引き起こします。
関心の分離を実現するための改善方法
関心の分離を実現するための鍵は、クラスやメソッドを責任に応じて分けることです。それぞれのクラスは、単一の責任を持ち、他の責任が必要な場合は別のクラスを利用するようにします。
改善案:責任を明確に分ける
例えば、「HitPointRecovery」クラスでは、回復量の計算に関する処理だけに集中し、好感度の計算は「PositiveFeelings」クラスに任せるようにしています。このアプローチを他のクラスにも適用することで、コードがよりシンプルで保守しやすくなります。
まとめ
クラス設計において関心の分離は非常に重要です。「HitPointRecovery」クラスの例のように、各クラスがその責任に集中することで、コードの可読性や保守性が向上します。関心が混在しているクラス設計を改善し、責任ごとにクラスを分けることで、より良いソフトウェア設計を実現しましょう。


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