「キャラクターを動かしたいけど、GIMPでどこからどう切り抜けばいいの?」という方に向けて、GIMPでのパーツ分け~Live2D Cubism取り込みまでを一気通貫で解説します。最初に結論:1枚絵をパーツ単位のレイヤーに分け、透過PNGやPSDで書き出し→Cubismで読み込み→メッシュ/デフォーマ/パラメータ設定、この流れを押さえればOKです。
準備:キャンバスとレイヤー設計(完成を逆算)
目的地(動かしたい動き)から逆算します。最低限は「顔:目(白目/黒目/ハイライト/まぶた)、口(口外形/口内/歯/舌)、髪(前髪/後ろ髪/サイド)、体(頭/胴/首/腕/手)」といった単位でレイヤー分け。Live2Dは重なりの余白(はみ出し)が要るので、下に隠れるパーツは絵を数十px延長して描き足しておくと後で裂けません。
解像度は縦3000~5000px程度あると変形に耐えます(背景は透明)。色収差や影は後で分けたいならレイヤーを分離、まずはベタ塗り→影→ハイライトの順で構成すると編集がラクです。
GIMPでの基本パーツ分解フロー
① 元PSD/PNGを開く:背景は削除or非表示にして透明キャンバスに。
② 選択→切り出し:パーツごとに「パス」ツール(精密) or 「自由選択」「前景抽出」→選択範囲を作成→Ctrl/Cmd+C→Ctrl/Cmd+V→「浮動選択範囲をレイヤーへ」。
③ はみ出しを描き足す:髪・口・目の下地など、動かすと露出する縁を消し跡が出ないように筆で数十px延長。
④ レイヤー名を厳格化:例)Head / HairFront / HairBack / EyeL_White / EyeL_Iris / EyeL_Highlight / EyelidL_Upper / Mouth_Outer / Mouth_Inner など。
⑤ エッジ整え:選択境界を1~2px縮小→ぼかし1px→消しゴム(筆圧低)か「修復」でエッジをなじませます。
部位別の切り抜きコツ(失敗しがちなポイント)
目:白目/虹彩/ハイライト/上下まぶたは分離。黒目(虹彩)は白目の下に隠れても良いように周囲を描き足し、瞳孔・グラデは虹彩内で統合可。まつ毛は上まぶたと別レイヤー推奨。
口:Mouth_Outer(外形)とMouth_Inner(奥)を分け、歯・舌は可能なら別。閉口~開口で破綻しないように口内は上下に余白を描き足す。
髪:前/横/後ろで分け、揺らす束は独立レイヤーに。根本から先端まで繋がるように、前髪の裏側を+20~40px描き足し、めくれても地肌が覗かないように。
体/衣装:首は頭とは別(首傾げ用)。肩・腕は袖や髪の下に入る面を延長。リボン/小物は動かすなら独立。
書き出し:PSD or 透過PNGのどちらが良い?
最優先はPSD:CubismはPSD読み込みがスムーズ。GIMPのファイル→エクスポート→.psdでレイヤー構造を保って出力(効果/モードは標準的なものに)。もし互換が崩れる場合は、各レイヤーを透過PNGで一括出力し、Cubismで配置します(拡張子は_tex不要)。
| パーツ | 推奨レイヤー名 | 備考 |
|---|---|---|
| 頭 | Head | 顔のベース |
| 前髪/後ろ髪 | HairFront / HairBack | 束ごと分離可 |
| 左目(白/虹彩/光/まぶた) | EyeL_White / EyeL_Iris / EyeL_Highlight / EyelidL_Upper | 右目はL→Rに |
| 口(外形/内側/舌/歯) | Mouth_Outer / Mouth_Inner / Tongue / Teeth | 開閉用 |
| 体 | Body | 首は別 |
Live2D Cubism:インポート→メッシュ→デフォーマ→パラメータ
① インポート:Cubism Editorで「新規」→PSD読み込み(PNGの場合はキャンバスへドラッグし座標配置)。テクスチャアトラスは後でOK。
② メッシュ生成:各レイヤー(=ArtMesh)を選択→自動メッシュ(標準)→必要なら点を増やして曲がりやすい構造に。毛先・口角・まぶたの流れに沿ってエッジを作ると歪みが減ります。
③ デフォーマ:大きい動きは回転デフォーマ(首・束・まぶた)、形変形はワープデフォーマ。親子関係は「体→頭→髪→目/口」の順で。
④ パラメータ設定:代表的にはParamAngleX/Y/Z(顔傾き)、ParamEyeLOpen / ParamEyeROpen(まばたき)、ParamMouthOpenY(開閉)、ParamMouthForm(口の形)。「編集→キーフォーム追加」で–1/0/+1等にキーを打ち、形を調整。まばたきは上まぶた+まつ毛を下げ、白目は少しつぶすと自然。
⑤ 物理/揺れ:髪束/リボンに物理演算を設定。振幅が暴れる場合は質量と空気抵抗を増やして調整。
⑥ テクスチャアトラス→出力:「テクスチャアトラス生成」でまとめ、.moc3/.model3.jsonでエクスポート。ビューワで動作確認します。
よくある失敗と対処
境界がガタつく:選択境界を1~2px縮小→境界をぼかす1px→エッジを整える。下地を描き足して裂け防止。
動かすと隙間が見える:「下に隠れる側」を多めに描く。とくに前髪の裏/口内/白目の周囲。
メッシュが伸びる:面を細かく、折れ線は動きの方向に沿う。デフォーマで大まか→メッシュで微調整の順で。
PSDが崩れる:レイヤー効果を最小限に。GIMPからPSDに出す前に描画モードを通常に統一、必要箇所のみ分離。問題が続く場合はPNG個別書き出しに切替。
実践ミニ手順(目の瞬き)
1) GIMPでEyelidL_Upperを別レイヤー、黒目EyeL_Irisを白目より一回り大きく。2) PSD書き出し→Cubism読み込み。3) ParamEyeLOpenにキー:1.0(開):通常 / 0.0(閉):上まぶたを下げて黒目をつぶし、ハイライトも下へ。4) 同様に右目も設定→自動まばたき設定で連動。
仕上げチェックリスト
- はみ出し余白:髪/口/白目は+20~40px
- レイヤー命名:左右は
L/Rで統一、後で探しやすく - 解像度:縦3000px以上、線はアンチエイリアスON
- 出力:まずPSD、崩れたらPNG個別
- Cubism:大→小の順でデフォーマを親子付け
参考リンク
[参照] GIMP公式ドキュメント / [参照] Live2D Cubism公式マニュアル
まとめ
パーツ分けの要点は「余白を持たせて綺麗に分離」「正しいレイヤー名で整理」「互換性の高い形式で書き出し」。ここまで出来れば、Cubism側のメッシュ→デフォーマ→パラメータは手順通り進めるだけ。まずは顔の瞬きと口パクの2要素から着手し、髪の揺れ→表情へと段階的に拡張していきましょう。


コメント