オブジェクト指向プログラミングの三本柱の一つである「継承」。この言葉が具体的な機能を指すのはなぜなのか、疑問に思ったことはありませんか?本記事では、オブジェクト指向における「継承」の意味や、なぜ他の2つの概念(カプセル化、ポリモーフィズム)と異なり「具体的な機能」を指すのか、その背景や意図について解説します。
オブジェクト指向における三本柱
オブジェクト指向プログラミング(OOP)では、基本的な考え方として「カプセル化」、「ポリモーフィズム」、そして「継承」の3つが重要な要素とされています。これらは、ソフトウェア開発における効率性や柔軟性を向上させるために不可欠な概念です。
「カプセル化」と「ポリモーフィズム」は、抽象的な考え方として理解されることが多い一方で、「継承」は具体的な機能を示す用語として使われるため、初めて学んだ人には違和感を感じることもあります。
「継承」の意味とは?
「継承」という言葉は、親クラスから子クラスに対して属性やメソッドを引き継ぐという具体的な動作を指します。例えば、親クラスで定義されたメソッドを子クラスがそのまま使用できるといった機能が「継承」です。
この「継承」によって、コードの再利用性が高まり、重複するコードを減らすことができるため、効率的なプログラム開発が可能になります。では、なぜ「継承」が「具体的な機能」として表現されているのでしょうか?
「継承」が具体的な機能を示す理由
「継承」という概念は、もともとオブジェクト指向の実装において「親クラスと子クラス」の関係を表現するために使われ始めました。親クラスが持つ属性やメソッドをそのまま子クラスが引き継ぐという具体的な処理が行われるため、他の抽象的な概念と異なり「機能的な動き」が明確に存在します。
この「具体的な機能」を指す用語として「継承」が選ばれた背景には、オブジェクト指向の設計哲学における「親から子へと受け継がれるもの」という概念が影響しています。オブジェクト指向の設計においては、親クラス(スーパークラス)と子クラス(サブクラス)の関係が非常に重要で、この関係を定義するために「継承」という言葉が使われるようになったのです。
「継承」の歴史的背景
オブジェクト指向プログラミングにおける「継承」の概念は、1970年代に始まったアルゴリズム設計やプログラミング理論の発展に遡ります。特に、SmalltalkやSimulaといった初期のオブジェクト指向言語では、クラスという概念が導入され、そこから親子関係の定義が行われました。
最初に「継承」という言葉が使われたのは、これらの言語で「親クラスの特性を子クラスが引き継ぐ」という考え方を説明するためでした。そのため、親クラスと子クラスの関係を表現する「継承」という言葉が自然に使われるようになったのです。
カプセル化とポリモーフィズムとの違い
「継承」が具体的な機能を示す一方で、カプセル化とポリモーフィズムは、より抽象的な概念です。
「カプセル化」は、オブジェクトの内部データを隠蔽し、外部からアクセスする手段を制御するという、設計上の考え方に過ぎません。一方、「ポリモーフィズム」は、異なる型のオブジェクトが同じメソッドを使えるという動作を表しています。これらは、プログラムの設計哲学やパターンを指し示しているため、「継承」のように具体的な動作に直結するわけではありません。
まとめ
オブジェクト指向における「継承」は、他の2つの概念である「カプセル化」と「ポリモーフィズム」と異なり、親クラスから子クラスに特性や機能を引き継ぐという具体的な動作を指します。そのため、プログラムで実際にコードがどう動くかという機能的な側面が強調され、「継承」という言葉が使われているのです。
「継承」という用語が指す具体的な機能と、その歴史的な背景を理解することで、オブジェクト指向の設計哲学がより深く理解できるようになります。
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